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第438話

「じゃあ、玩具使わなかったら?」 「それなら……いい、けど」 「したくない?」 「っ……した、い」  彼はいつの間にかテレビを消していて、俺のスマホをさり気なく取り上げた。そのまま横に押し倒されて、ソファの座面に身を預ければ、ちゅっ、ちゅっ、と啄むようなキスが振ってくる。 「ん……」  彼の厭らしくて優しいキスはとても心地が良くて、腰骨の奥がぞくりと期待に震えた。  * * * 「──なあ、これ純の彼氏だろっ!」 「え?」 「杉田グループの社長って凄いな!」  昼休み始まりの鐘が鳴って席を立とうとしたけれど、興奮気味にスマホの画面をこちらに向けて話し掛けてくる拓人の勢いに押され、呆然とそれを見る。  見せられたのはニュースの記事で、正和さんの写真と共に売上が三年で二倍になったようなことが書かれていた。  自分が知らなかった仕事内容についても軽く触れてあり、どこか他人事のように彼の写真を見つめる。 「へえ……こういう仕事してたんだ」 「え、知らなかったの?」 「うん、聞いてないし」 「まじかー」 「えー、なになにー」  お弁当を持った勇樹も興味津々で話に加わって、拓人のスマホを覗き込んだ。 「ほら、純のカレシ」 「えー、すごー。……てことは、めちゃめちゃ金持ちじゃん。逆玉? いや逆玉でもないか、玉の輿?」 「え、あのイケメンそんな凄いの?」  笠原まで話に加わって、他のクラスメイトも好奇の目を向けてくる。 「……もうその話はいいじゃん。お昼食べよ」 「そうだな」  拓人がスマホをポケットにしまうと、皆も座ってお弁当を広げた。 「でも勢いのある会社ってどこかで失敗しそうだよねー」 「え……」 「そんなことないだろ。長く続いてるし」 「だけど二代目じゃん?」  勇樹の言葉に固まって口を閉ざせば、拓人がフォローするようにその言葉を否定した。それでもその話題を続ける勇樹の言葉に、拳をぎゅっと握り締める。  友達とはいえ、正和さんのことを悪く言われているみたいで、なんだか嫌な感じだ。

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