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第441話
俺が寂しくないように……と、彼が本気で選んでくれたんだとしたら、これも悪くないかもしれない。いつもの洒落たプレゼントとは違って、これはこれで思い出に残る。
「……ありがとう。大事にするね」
「うん。とりあえずご飯食べよう。もうすぐ出なきゃいけないから」
「あ、そうだね。なに手伝ったらいい?」
一緒に夕飯の準備をして食事をとった後、正和さんはすぐに仕事に行ってしまった。
今日はそんなに遅くならないと言っていたから、待っていよう。そう思って、軽くシャワーを浴びてから、ソファにドカッと腰掛けた。
「はぁ……どーすんの、これ」
隣にいるウツボカズラの寝袋をじっと見つめて、そっと触れてみる。
低反発な素材でできているのか、思っていたより、ふかふかしていて肌触りは良い。中に入ったらとても気持ちよさそうだ。
けれど、見た目はどうも苦手だし、食虫植物の中で寝るというのは絵面 的にもやばい。寝袋として使う気にはなれなくて、どうしたものかと考えながら、思わず苦笑する。
試しにぎゅっと抱きしめてみるけれど、中が空洞になっているので、抱き枕にはならなそうだった。
「うーん……ん?」
寝袋を離してソファに置こうとしたその時、柔らかいはずのそれに脚をコツンとぶつけて首を傾げる。
寝袋の下の方を摘まむように触ってみれば、中に何か入っているのか硬い感じがした。
なんだろう、と奥を覗き込んで、底の方に見えたビニール袋に入った毛を引っ張り出す。
「尻尾……?」
だが、ガサガサと袋を開けている途中で、尻尾に雫型の金属のようなものがついていることに気付いて、顔をかあっと赤く染めた。
「っ……」
この形はあそこに入れる玩具だ。なんてものをプレゼントするんだ、と思いながら、袋に戻してソファに置く。
けれど、先ほど寝袋越しに触れたものはこれではない。そんな気がしてもう一度奥の方を確認すれば、やはり箱が一つ入っていた。
また玩具かな……と少し呆れながら寝袋の底を持って中身をソファに振り落とす。
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