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第442話

「なんだろ……?」  ひっくり返ったそれを手に取り、表に向ける。玩具にしては箱が立派だし、高級感もある。もしかして、ちゃんとしたプレゼントも用意していたのだろうか。  寝袋を適当に置いて、リボンをそっと解く。少しワクワクしながら箱を開けると、柔らかいコットン生地でくるまれた何かが出てきて、胸が高鳴った。  折り返してある布袋を丁寧に開けて、恐る恐るそれの中身を覗く。 「──財布だ。え、かっこいい」  袋の中から取り出して、財布の表と裏を見た後、二つ折りのそれを開いて中も確認する。使いやすそうだし、自分の好みだ。ちょうど新しい物が欲しいと思っていたからとても嬉しい。 「ん? 手紙?」  予想外のプレゼントに喜んでいたら、財布のカードポケットに小さなカードが入っていることに気がついて、そっと引き抜く。 『マフラーありがとう。とても嬉しかったよ。わざわざ手作りしてくれたのに、お返しは手作りじゃなくてごめんね。愛してるよ。これからもよろしく』  彼の綺麗な字で「純へ」と書かれたメッセージカード。こうして改めて気持ちを伝えられるのは気恥ずかしいけれど、やっぱり嬉しい。 「あれ、裏にも──」 『追伸。ウツボカズラ大事にしてね。俺に似てるって言ったんだから、粗末にしたら許さないから。責任持ってね♡』 「────やっぱめちゃくちゃ気にしてるじゃん!」  先ほどは全く気にしていないような素振りだったのに、文面は嫌味満載だ。  部屋の片隅にでも放置したら、お仕置きされそうな気がして背筋がぞくりと震えた。  中にタオルか何かを詰め込めば抱き枕として使えるだろうか。  ──いや、この中で寝たら、さすがの彼も襲う気が起きなくなるかもしれない。そういう意味ではこの中に入って寝るのもありだ。見た目だけではなく物理的に手を出すこともできないだろう。

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