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第七章 いじわる彼氏とハネムーン 444

 八十点以下ならお仕置き、と言われていた学年末テストではほとんどの科目で九十点以上をとることができた。苦手な上に寝不足で散々だった数学も八十一点で、お仕置きはギリギリ免れた。  今までどんなに良い点をとっても見向きもしなかった家族とは違って、正和さんはすごく褒めてくれる。なんだか照れくさかったけど、三年生になったらもっともっと頑張ろうと思えた。  先週の土曜日は指輪を受け取りに行って、美容院で髪を整えてもらった。……と言っても、俺の好みではない髪型で若干不満ではある。けれど、正和さんがとても嬉しそうだったので、これでもいいかと思えた。  受け取った指輪は早く着けたいけれど、結婚式で交換するまでは大事にしまっておくことにした。  教科ごとに配布される春休みの課題は、配られたものから順に終わらせた。あとは数学が数ページと、昨日もらった世界史だけだ。今日は修了式だけで午前中に帰れたので、残りの課題もなんとか旅行前に終わるだろう。  明日から待ちに待った旅行だ。初めての国外旅行ということもあり、少しドキドキする。だが、段取りは全部正和さんがやってくれているので心配はなかった。 「──旅行の準備できた?」 「できた。出るのって夜だっけ?」 「うん、六時に迎えがくるよ」 「迎え……? 誰か来るの?」 「ん。いつも会社行くときお願いしてる運転手さん」 「へえ」  運転手がいたんだ。知らなかった。  彼がいつも運転してくれているのは、俺と二人っきりになりたいとか、かっこいいとこ見せたいとか、そんな理由なんだろうな、というのは容易に想像できる。 「宿題は終わった?」 「あと少し」 「そっか、頑張ってね。俺も仕事片付けるから部屋にこもるね」 「うん」  彼が部屋を出て行ったあと、続きのプリントを机に広げる。旅行にまで課題を持って行きたくはないので、いつにも増して熱心に取り組んだ。

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