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いじわる彼氏とハネムーン 445
「飛行機は乗ったことあるんだっけ?」
「ううん、初めて」
「そっか。じゃあ、純、窓側座る?」
「え、通路側でも別に良いよ?」
「────」
気を遣って善意で言ったつもりだったけど、彼が顔を引き攣らせたのを見て思い出す。
──そうだ、正和さんは高所恐怖症だった。
きっと窓側は嫌なのだろう。
「あ、やっぱ窓側座る」
「うん、着く頃は景色良いと思うよ」
いつも意地悪されているから、彼のことを少しいじりたい気持ちもあったけど、旅行は楽しく過ごしたい。そう思って、彼に通路側の席を譲れば、彼は分かりやすく安心した顔をした。
彼のそんなところが少しだけ可愛い。
「……あれ? 並ばなくていいの?」
「俺たちはこっち」
空港に着いて「FirstClass」と書かれたカウンターに並ぶ正和さんに驚いて、目をぱちくりさせる。
ファーストクラス? ……って、もしかして、いや、もしかしなくても凄いんじゃ……?
ぼーっとそんなことを考えていたらいつの間にか搭乗手続きは終わっていて、荷物を預けた後、保安検査を受けた。春休みだからもっと混んでいるかと思ったけれど、そうでもない。
それは手続きや検査の時、並ばずに済んだからそう感じるのだろうか。
出国手続きを済ませた後、ラウンジに入って端の方のソファに腰掛ける。あとは、搭乗時刻までのんびり待っていれば良いらしい。
初めて乗る飛行機。少しドキドキワクワクする。
「正和さん、あっちにサラダとかケーキあるよ」
「うん、好きなの持ってきて良いよ」
「いいの? 空港って凄いね」
サラダやお肉、海鮮丼などを持って席に戻れば、彼は料理を凝視する。
「たくさん持ってきたね。機内でも出るけど大丈夫?」
「えっ、そうなの?」
驚いて聞き返せば彼はクスクス笑った。そういうことは先に言ってほしい。
「……正和さんも何か持ってくる?」
「ありがとう。自分でとってくるから、食べちゃってていいよ」
「うん」
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