446 / 494
いじわる彼氏とハネムーン 446
このあとまた食事が出てくるのかと思うと、少し食欲が落ちる。けれど、自分で持ってきた物を残すことはできなくて、たくさんあった料理を平らげた後、ケーキまで食べてしまった。
ケーキは最初に見た時から、美味しそうでデザートに食べると決めていたから仕方ない。
満腹で、これ以上食べられそうもないけれど、正和さんはお酒と軽食程度に留めていた。
「あとどれくらい?」
「一時間かな」
「ジュース持ってきて良い?」
「いいけど、何本目?」
「四本目……?」
少しはにかみ ながらそう答えれば、彼は苦笑する。
「お腹壊さないでね」
「こわさないよ!」
その後も彼と他愛ない会話をしていたら、時間なんてすぐに過ぎて、搭乗時刻となった。荷物はスマホくらいしかないので、身軽に飛行機に乗り込む。
正和さんは手を繋ごうとしてきたけど、さすがに人目が気になって軽く交わした。
「席、そこね」
指さされた窓側の座席に座ると、正和さんも隣に腰掛ける。
「やっぱ古い型だと少し狭いね」
「そうなの? 凄い広いじゃん」
たしかに背の高い正和さんからすると、少し狭いのかもしれないが、それでも十分な広さだ。
「まあ、広いと席も離れちゃうしちょうどいっか」
「……ねえ、これ、このマーク。椅子がベッドみたいになるの?」
「うん。ゆっくり寝れそうだね」
「向こう着くのって朝だっけ?」
「そうだよ。だからちゃんと寝とかないと」
シートベルトをしっかり締めて、手を膝に置く。ドキドキしながら離陸するのを待っていたら、何故かクスクス笑われてしまった。
「これから授業でもうけるの?」
「え」
「もっとリラックスしてていいんだよ。そんなシャキッと座らなくても」
彼は笑いながら、硬く握りしめていた俺の手に、するりと指を絡ませて優しく握る。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!