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いじわる彼氏とハネムーン 447

「初めて乗るから、なんか緊張して……。正和さんは大丈夫なの?」 「何が?」 「高いとこ苦手って言ってたから」 「……心を無にしてる」  それってつまり……怖いってことなんじゃ……?  そう思ったらなんだか凄く可愛く見えて、彼の手をぎゅっと握り返した。 「心配してくれなくて大丈夫だよ。どうせすぐ寝ちゃうし」  正和さんはクスクス笑ってそう言ったけど、いざ離陸するってなった時は、顔を強張らせていたから、本当に高い所が苦手なのだろう。  さすがに揶揄う気にはなれなくて、彼の手を優しく握ったまま大人しくしていた。  しばらくしてシートベルト着用サインが消灯し、飛行機の音が静かになると、彼も落ち着いたようだ。  そのあと出てきた機内食はほとんど食べられなくて、残した食事は彼が全部食べてくれた。  食事を終えると、彼は宣言通りすぐに寝てしまったので、俺もそのまま寝る姿勢に入る。  けれど、先ほどジュースを飲みすぎたせいか、再びトイレに行きたくなってきて足を揺する。我慢できないほどではないが、寝る前に行っておきたい。  ガタガタすると正和さん起きるかな……?  窓側だからそーっとトイレへ行っても彼を起こしてしまいそうだし、周りもみんな寝ていて行ける雰囲気ではなかった。  …………寝よ。  あと五時間ちょっとだからそれくらいだったら、たぶん我慢できる。そう思い、毛布を口元まで掛けて目を瞑ったけれど、やっぱり気になって寝付けない。 「んー……、どうしたの」  落ち着かなくて、もぞもぞと寝返りを打ったりしていたら、結局彼を起こしてしまったようで、欠伸をしながら話し掛けてくる。 「と、トイレ行きたくて……っ」  小声でそう答えれば、彼は不思議そうに眉を上げた。 「行けば良いじゃん」 「だって」 「……それともそういうプレイがしたいの?」

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