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いじわる彼氏とハネムーン 451
たった三時間ほどしか眠っていないのに、先ほどよりも随分と頭がすっきりしていた。早く観光したい気持ちでいっぱいで、正和さんを急かす。
「髪の毛そのままでもかっこいいよ」
「……絶対そう思ってないでしょ」
そう言いながら彼はドライヤーで髪の毛をセットする。正直、セットしてもあまり変わらない気がするし、俺はどっちでも良いのだが、彼なりにこだわりがあるらしい。
「──いこっか。お昼ほんとにそこで良いの?」
「うん」
「甘いの好きだねー」
彼は苦笑しているけれど、文句も言わずにいつも俺に合わせてくれる。意地悪なところもあるけれど、こういう優しいところもたくさんあるから、嫌いになれない。
恥ずかしいし、調子に乗るから絶対言わないけど、正和さんへの「好き」という気持ちは他の誰にも負けない自信がある。
「どこ行くの、純。こっちだよ」
「え、道あってる?」
「あってるよ」
クスクス笑った正和さんの手が俺の手首に触れて、流れるような動作で指を絡めてきた。
けれど、たくさんの人や車が往来している場所で手を繋ぐのは、まだ慣れないし恥ずかしい。ドキドキして顔を上げれば、彼はにやりと口角を上げる。
「はぐれたら困るからね」
「っ……はぐれないよ!」
彼の言葉に顔をかあっと赤く染めて声を荒げると、彼はまたクスクス笑っていた。
ホテルから歩いて五分ほどの所にあるドーナツで有名なカフェに着くと、ワクワクしながら中に入る。店内はやはり女性客が多く、男二人だとちょっと浮いてる感じがした。
「どれにする?」
「うーん……これと、これと……これと……」
砂糖をまぶしただけのプレーン味、中にベリーソースが入ったベリー味、カスタードクリーム味、チョコレート味、小豆抹茶味の五種類のドーナツを注文する。他にも種類があったけど、これ以上は食べられそうもない。
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