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いじわる彼氏とハネムーン 455
「何? 海は今の時間帯が一番きれいなんだから、もったいないよ」
グイグイと腕を引っ張られて、強引に部屋の外へ連れ出される。勢い余ってつまづいたが、彼はそのまま廊下を進んだ。
「ま、待って」
裾の長いドレスは歩き慣れなくて、歩きが速い彼に合わせると自然と小走りになってしまう。転ばないように掴まれている方と反対の手でスカートをたくし上げ、再び顔を上げると、前方から人が歩いてくるのが見えた。
「……っ」
男女のカップルとかち合ってしまい、恥ずかしくて居たたまれない。
泣きそうになりながら、唇をぐっと噛んで俯けば、正和さんが慌てて隣に来てくれた。カメラマンの手をやんわり離し、そっと指を搦 めてくる。
「大丈夫だよ、純」
正和さんは落ち着かせようと優しくそう言ってくれるけど、やっぱり男の俺がこんな格好で出歩くなんて滑稽 だ。早く終わらせて帰りたい。
──そう思っていたのに。
パチパチパチパチと手を打つ音が聞こえてきて。驚いて顔をそちらに向けると、すれ違った人たちに声をかけられた。
拍手をしてくれたその人たちはニコニコしながら、手を振って去っていく。
しかし、英語はあまり得意ではないから、突然過ぎてなんて言われたのか聞き取れなかった。いや、それがもし日本語だったとしても、動揺していて言葉が耳に入ってこなかっただろう。だけど、悪い感じはしなかった。
ホテルのロビーまで出ると、また何人か宿泊客がいて胸がドキドキしてくる。
けれど、俺の想像とは全然違った。
最初は聞き取れなかった言葉も、会う人みんなが同じように声をかけてくれるから、混乱した頭でもスッと頭に入ってくる。
たくさんの人たちが「おめでとう!」とか「お幸せに」と言ってくれてるのがわかって、先ほどとは違う意味で泣きそうになった。
「ほら、新婦さん凄く綺麗だって、みんな言ってるよ」
大きな拍手の音を聞きながらホテルを出ると、目の前に停められた立派そうな車に乗せられて移動する。
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