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いじわる彼氏とハネムーン 456
「君も男なら腹くくりなよ。一回オッケー出したんでしょ? なにごねてんの」
「……っ」
「そんなんだから、まーくんがカフェ借り切ったりしちゃうんだよ」
「あ、それは言うなって」
「まー、くん……って正和さん? え、そんなことしたの?」
「言ってなかったの? 海と火山がいい感じに見えるとこでさ、そこで撮ったら綺麗な写真が撮れるなぁって。別に借り切る必要なんてないのに『──だめ、人が多いと嫌がるから』って」
一眼レフカメラを覗き込みながら、呆れた様子でそう言った彼は写真を撮る気満々だ。
「そう……だったんだ」
正和さんなりにちゃんと考えてくれていたことを知り、なんだか胸が熱くなる。
「……そういうこと、言ってくれれば良かったのに」
初めからそれを知っていたら、さすがに俺だって断れない。俺のストレスを少しでも減らそうと準備をしてくれていた彼に対して、そんなことできるわけがない。
「だって、言ったら無理するでしょ? 俺だって嫌がってる純と撮りたいわけじゃないんだよ。純の可愛い姿を写したいんだから」
腰を抱き寄せられて、スカートを握る手に思わずキュッと力が入る。
「……やっぱり、正和さんと写真撮りたい」
「じゅん~!」
ぎゅうっと抱きしめられて、上半身がキュッと持ち上がる。息苦しさに彼の胸をドンドン叩けば、彼は凄く嬉しそうな顔をして、唇に触れるだけのキスを落とした。
「ありがとう。本当にいいの? 泣かない?」
「泣かないよ! ……それにカメラマンとか撮影場所とか、色々準備してくれてるのに、キャンセルなんてやっぱりできない」
「当たり前でしょ。昨日ビーチ下見したら、最高な絵が撮れそうなとこ見つけたんだから。キャンセルは許さないよ」
「キャンセルでも、ちゃんと全額払うって」
「そういう問題じゃないの」
見た目だけでなく口調も子供っぽいが、写真へのこだわりは強いらしい。これはちょっと楽しみになってきた。
ドレスは好みではないけれど、後で写真を見返したら正和さんとの良い思い出になるかもしれない。
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