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いじわる彼氏とハネムーン 458

 予想外の指示を出されて、顔がかあっと赤くなり体が硬直する。 「ほら、早くして」  カメラマンに急かされて、正和さんの後ろへ回ると、彼は軽く振り返って楽しそうに目を細めた。その表情にドキリと脈が跳ねて、落ち着かなくなる。  さっきは、ドレスが恥ずかしいという思いで頭がいっぱいだったから、彼のことはあまり見ていなかった。  だが、こうして改めて見ると、彼の真っ白なタキシード姿は凄くかっこよくて、胸がドキドキしてくる。 「そうそう。それでまーくんの肩に手を置いて」  言われたとおり彼の肩に軽く手を乗せて、しゃがんでいる彼の頬にちょんとキスをする。そのまま写真を撮られるのをじっと待てば、顔が熱くなっていくのがわかった。 「……ねえ、顔赤すぎ。もうちょっと自然に。あと、まーくんはニヤケすぎ」  そんなこと言ったって、自分の意思で赤面しているわけではないのだから無理難題だ。指摘されてさらに顔が赤くなってしまう。 「……まあ、これはこれでいっか。うん、二人らしいよ」  その後も、少し場所を変えながら、ビーチでたくさん撮影した。人がいないから周りを気にせず撮影できたのもありがたい。  ビーチでの撮影が終わった後は、再び車で移動して、広場のようなところへ来た。芝生で座って会話しているところを撮影したり、お姫様抱っこされているところを撮られたり。  そうして次の撮影場所へ移動すると、着いたのはカフェで、どうやら借り切ったところらしい。車を降りると、景色の綺麗なところを通り過ぎて、建物の陰のほうに連れて行かれる。 「あれ? あっちで撮るんじゃないの?」 「そうだよ。でも、その前に純は着替え」 「え……」  タキシードでも着るんだろうか、なんて思っていたら、お姉さんがミニ丈のウェディングドレスを持ってきた。 「っ……そ、それ着るの?」

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