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いじわる彼氏とハネムーン 459
「その為に買ったんでしょ」
「っ……そう、だけど……」
「着てくれないの?」
彼はそう言いながら俺の背中に手を回し、さりげなくドレスの編み上げの紐を解いてくる。本気で拒む気はないのを知ってて聞いてくる彼に、どう反応したら良いのか分からない。
「……笑わないでよ、絶対」
「んー、可愛すぎてニヤケちゃうかも」
そんな冗談を言った彼に、先ほどまで着ていたドレスを脱がされる。お姉さんの手伝いを借りて、丈の短いドレスを着せられたあと、髪の飾りも付け替えられた。
「…………」
店で試着した時も思ったけれど、やっぱり短い。
膝より少し上のあたりでふわふわ揺れるスカートが気になって落ち着かなかった。ひらひらと舞ってふわりと捲れたそれを慌てて手で押さえつける。そうして顔を上げれば、厭らしくだらしのない顔で俺を見ている正和さんと目が合った。
「……鼻の下伸びてる」
「えー……だって見えそうだし。なんかやらしいよ」
そんな服を着せてきたのはお前だろ、と思いながら、ポカッと彼の胸を軽く叩けば彼は楽しそうにクスクス笑った。
写真撮影を再開すると、先ほどと同じようにいろんなポーズをとるよう指示される。けれど、さっきと違ってスカートが短いせいで、足元がスースーするし、風が吹くたび捲れそうになるそれが気になって、終始ソワソワしていた。
後半は正和さんにセクハラまでされてしまって、カメラマンの死角で静かな攻防戦が繰り広げられる。
スカートの中に手を入れてきて脚やお尻をさわさわ撫で回したり、煽るような手つきで腰に腕を回してくるものだから、撮影が終わる頃には体が火照ってたまらなかった。
その上、正和さんはいつになくスケベな顔をしているし、カメラマンもお姉さんも気付いている様子だったし、なんだかもう早くホテルに帰りたい。
「今日はありがとう。明日もよろしく」
「明日は駄々こねないで、ちゃんと時間通りに来てよね」
「~~っ」
「大丈夫だよ。結婚式は純も楽しみにしてるから。……ね?」
「う、うん。……明日も、よろしくお願いします」
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