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いじわる彼氏とハネムーン 460

 ホテルまで送ってもらったあと、ドレスから私服に着替えてソファに深く腰掛ける。  正和さんのことだから、ドレスはきっと女装プレイに使う気でいるんだろうけど、あれを着るつもりは二度とない。  いくらするんだか知らないけど、買うなんて勿体ないなぁと思いながら、テレビをつけた。 「純~、ちょっと来て」 「なにー?」  やっと落ち着けたのに。そう思ったけど、無視するわけにもいかないので、重い腰を上げて声のした方へ行く。 「どうしたの?」 「ほら、これ。純はやりたいのある?」  見せられたのは数枚のチラシとパンフレットで、おそらくオプショナルツアーの案内なのだろう。観光はあまり興味なさそうだったのに意外だ。 「んー……あ、これ! えっと、まわる…島……」 「ああ、島内一周? いいかもね。下で予約できるみたいだから、あとでしてこよっか」 「うん。……正和さんはやりたいのないの?」 「俺は純と一緒なら、なんでも良いよ」  正和さんはそう言いながら、俺の腰に厭らしく手を回してくる。変態くさいその手つきから逃げるように腰を引けば、椅子に座っていた彼の上に座らせられてしまった。 「えー……。じゃあ、これもやりたい」  俺が指差した一枚の写真を見るや否や、脚を撫で回していた彼の手がぴたりと止まる。正和さんの方を振り向けば、予想通り彼の顔がヒクリと引き攣って青ざめていた。 「パラ、セーリング……? え、こんなのほんとにやりたいの? かなり高く上がるよ?」 「だからいいんじゃん! 絶対景色いいもん」  ちょっとだけ彼の困る顔が見たくて、わざとワガママを言えば、彼は眉尻を下げて、しおらしい顔をする。俺の腰に回したままの手にキュッと力が入って、そのまま俺の(うなじ)に顔を(うず)めてしまった。  普段は余裕綽々なのに、弱点を突かれた時の彼のこういう所はほんと可愛い。 「────わかった」 「え、いいの?」 「だってやりたいんでしょ?」

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