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いじわる彼氏とハネムーン 469
ベッドにはタオルで象られた白鳥がくちばしを合わせてハートを作っているし、その周りには花びらが散りばめられている。
両脇には赤やピンクのハート型の風船がたくさん浮かんでいて、部屋全体が甘ったるい雰囲気だった。
「うわー……」
結婚のお祝いなんだろうけど、正直こういう演出は嬉しくもなんともない。
見なかったことにしようと、開いた扉を閉める。けれど、扉が閉まるより先に後ろからぎゅっと抱きしめられて、彼の胸にごつんとぶつかった。
「うわっ……びっくりした」
「中入んないの?」
「だって、なんか変」
「変って……感動したでしょ?」
「いや……ああ、うん」
「微妙な反応」
正和さんは苦笑しながら、俺の肩に顎を乗せてくる。そのまま抱きしめる手に力を込められて体が密着すると、彼の体温が背中からじんわり伝わってきて、胸がドキドキしてくる。
「────俺と一緒になってくれてありがとう」
「え、急になに?」
「急ってわけじゃないけど、結婚したんだなあと思って。これからもよろしくね」
「うん……って、いや、なんか正和さんらしくないし。どうしたの? 大丈夫?」
「そうかなぁ。じゃあ、式も終わったことだし、エロいことしよっか」
いつものように意地悪げな口調で言った彼の顔は見えないけれど、ニヤニヤ笑みを浮かべているのがわかって、背筋がぞくりと震えた。
「っ……や、優しく、してよ」
さり気なく体を押してベッドの方へ歩くよう促してくるので、思わず後ろを振り返る。そうすれば、何を思ったのか正和さんはニヤリと笑った。
「もちろん。初夜は優しく……ね」
含みのある言い方をされて、心臓が早鐘を打ち始める。初めて彼とした時にも同じことを言われたのを思い出し、顔がかあっと赤くなった。
「そう言って優しくしてくれなかったじゃ──ンぅ……!」
言葉を遮るように荒々しく口付けられる。舌をくちゅっと吸い上げられて、弱い上顎を舌先で擽るようになぞられれば、たちまち体が熱くなった。
腰骨の奥がずくんと疼いて、唇が離れたあとも彼の胸にもたれ掛かったまま動けない。
「なぁに?」
「~~っ、……なんでもない」
意地悪くニヤニヤ笑う彼にそう返すのが精一杯で、そのままベッドに押し倒される。
押し倒し方はいつもより少しだけ優しかった。
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