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いじわる彼氏とハネムーン 473
「ぜんぶ、入っちゃった……」
「ふふ、凄い眺め」
「……見ないで」
恥ずかしくて赤くなった顔を隠すように俯く。けれど、癖でやったその行為は、彼の上にいる今、何の意味もなさない。それどころか、かえって見せつけることになってしまって、尚のこと恥ずかしくなった。
「っ……」
「ほら、動いて」
「今やろうと……あぁっ」
「早くしないと小さくなっちゃうよ」
ユサユサと下から揺すられて、油断していた口から嬌声が上がる。あの正和さんが小さくなっちゃうなんて、そんなことあるわけないのに。彼はクスクス笑って意地悪なことを言う。
「っ、はっ…ぁ」
自分の膝に手を置いてゆっくり腰を浮かせれば、ローションの滑る感触に下腹部がビクビク震える。動きが止まりそうになるけれど、彼が揶揄うような視線を送ってくるので、一生懸命腰を動かした。
こうなったら前言通り、正和さんを泣かせてやる。そう意気込んできゅっと後ろを締める。
「……悪い表情 」
そんなことを言うけれど、目をスーッと細めた彼の方が俺なんかよりずっと悪い顔だ。
泣かせられるかどうかはともかく、そんな彼の余裕のなくなった顔を想像したら少し楽しくなった。
「んっ、っ……はぁ」
彼の先端を包み込むようにゆっくり腰を落とせば、ぞくぞくっと甘美な痺れが全身を駆け巡る。その余韻に浸る間もなく再び腰を浮かせて、徐々に速度を上げれば、彼も気持ちよさそうに息を詰めた。
「あっ、あっ、あっ」
体が蕩けそうに熱い。腰骨の奥が痺れたように気持ちいい。体内 が絶え間なく収縮して彼を誘い込む。
「っ……かーわい。イっていいよ」
「あっあぁ、正和さんだって、余裕、ないくせに……っ」
「ふふ、そうだね。純が可愛すぎるから、俺はいつも余裕ないよ」
「はぁ……っ、むかつく」
あたかも普段通りだと言うような口振りは面白くないが、余裕だった正和さんの表情も次第に切迫したものへと変わり始める。
自分も余裕なんて疾 うにないけれど、彼の顔を見たら思わずにやりと笑みがこぼれた。いつも意地悪してくる彼の気持ちが今は少しだけ理解できる。
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