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いじわる彼氏とハネムーン 474

「あっあっ……あっ、はぁん……っ」 「純……っ」  彼の吐息が荒くなり、眉を顰めてイキそうになったのが分かって、腰を深く落とす。そのまま動きを止めて、彼の胸にぺたりと手をつけば、寸止めを食らった彼は唇を軽く噛んだ。  彼の火照って()れた顔を見たら、すごく満たされた気持ちになって、ぞくぞくっと下腹部が熱くなる。 「──やってくれたね」 「へへ、いつものお返し」 「ふーん?」  そうは言っても、自分もかなり限界が近かったから彼と同じく寸止め状態だ。我慢もそう長くは続かない。──それなのに。 「じゃあ、俺は三倍返し」 「へっ……? 待って、それ絶対おかし──っ」  腰をグイッと掴まれたと思ったら、体がクルッと反転して、視界には天蓋(てんがい)を背景に意地悪な顔をした正和さんが映る。  彼に乗っかられてしまって、慌てて(もが)いたけれど、そんな隙もなく手首を押さえつけられてしまう。完全に形勢逆転されてしまって背中にぶわっと嫌な汗をかいた。 「じゅーん♡」 「っ……まさ、かずさん」  彼の楽しそうな笑顔にヒクリと顔が引き攣る。こうなってしまったら最後、もう俺に逃げ場はない。 「ご……ごめん、なさい。許して……?」 「んー? 何を?」 「なにって……その、寸止め、したこと……」 「俺のこと気持ち良くしようとしてくれたんでしょ? 俺も純のこと、うんと気持ち良くしてあげる」  そう言われたら何も言い返せなくなってしまう。違うと言えば仕置きされるだろうし、肯定すれば俺がしたことを何度もされるのは目に見えている。 「……っ」  どうしようもなくて、眉尻をへにゃりと下げて彼を見上げれば、唇にそっとキスを落とされた。 「可愛い。愛してるよ」  優しく言った彼の声音とは裏腹に、獰猛(どうもう)な獣のような瞳で捉えられて、背筋がぞくりと震える。  これ以上の抵抗は何の得にもならない。そう確信して、体の力をそっと抜いた。 「ふふ、お利口さん」  そう言った正和さんの頬に軽くキスをして、素直に身を委ねれば、蕩けるような甘く激しいキスが返ってくる。  今日はきっと泣いても叫んでも、体力が尽きるまで啼かされ続けるに違いない。──夜はまだ始まってもいないのだ。

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