「あ、来た！」 　今日は待ちに待った観光で、島を一周する予定だ。 　ホテルまで迎えに来たガイドさんと共にリムジンに乗ると、自分たちの他に二組のお客がいた。どうやら自分たちが一番最後の参加者だったようで、車は観光地に向けて走り出す。 　老夫婦と大学生くらいの男二人組、合わせて六人で回ることになるらしい。人数が少ない気もするが、騒がしい雰囲気を好まない正和さんが申し込んでいたのは少人数のツアーだったから、こんなものなのかもしれない。 「わ、あの看板おもしろいね！　変な形してる」 「ほんとだ」 　大きく目立つ看板をスマホで撮影して、流れゆく景色を興味津々で視界に映す。 「張り切ってるねー……」 「え、そんなことないよ」 　今朝は凄く眠かったけど、寝不足のせいか却ってテンションが上がってしまい、朝から凄くワクワクしていた。 　けれど、正和さんはそれほど観光に興味が無いようで、そんな彼につられて俺までしゅんとなる。 「……正和さんはあまり行きたくなかった？」 　首を傾げれば、正和さんは俺の腰に腕を回して、何故か下腹部を弄(まさぐ)る。 「んー、もう少し二人きりでイチャイチャしたかったかな～」 「ぁっ、ちょ……どこ、触って……っ」 「どこって……純のえっちなとこ？」 「ばか……っ」 　さわさわと股間を揉み始めた彼の手を掴んでキッと睨み付ければ、すんなり離れていった。けれどそう思ったのも束の間、すぐにお尻に手が伸びてきて、そこを厭らしく撫で回してくる。 　正和さんの頭はそれしかないのかと若干呆れつつ窓の外に目を向ければ。何やら見覚えのある景色が眼前に広がった。 「あ、ここ昨日も通った」 「…………、そうだね」 　正和さんはつまらなそうにお尻を揉むのをやめると、腕を組んで俺の肩に頭を乗せた。と、言っても、身長差のせいでだいぶ無理をして寄りかかっているから端(はた)から見たらおかしな体勢だ。 「もう着くのかな？」 「あっちの階段上がった所から火山がよく見えるんだよ」 「へえ、詳しいんだね」 「何度か来てるからね」 「……そうなんだ」 　前は誰と来たんだろう、なんて疑問が浮かんで少しモヤッとする。けれど、にこりと笑った正和さんの言葉でそんなのはすぐにかき消えた。 「でも恋人と来るのは初めてだから、なんか新鮮」 「……今まで連れてきたこと無いの？」 「ないねー。ずっと遊んでばっかだったから、ちゃんと恋人いたことって少ないし。──あ、着いたみたいだよ」