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いじわる彼氏とハネムーン 478

「プール入んないの?」 「はいるよ!」 「じゃあ、タオル取ってくるね」  クスクス笑って洗面所に行ってしまった彼を見て、やっぱり考えすぎかなと思った。最近は優しいし、やたらお揃いにしたがるから、きっと妥協してくれたのだろう。  正和さんとお揃いの水着を目の前で広げて、思わず口角が緩んだ。 「♪ふんふ~んふふ~ん」  着替えて鼻歌を歌いながらご機嫌にリビングへ行くと、既にプールへと繋がるガラス戸は開いている。戸の奥にはビーチベッドにタオルを敷いている正和さんの姿が見えた。  ペタペタと裸足で外に出れば、正和さんは楽しそうにニコニコしながら手招きしてくれる。 「純って鼻歌まで音痴だね」  そう言って彼はクスクス笑う。 「……わざとだし」 「そうかなあ」 「じゃあもう歌わない」 「ごめんね、怒らないで。音痴なとこも凄く可愛いからつい構いたくなる」  頬を膨らませて浮き輪を足から(くぐ)らせれば、膨らんだ頬を人差し指で(つつ)かれる。 「……なに」  しつこくぷにぷに触られて、思わずその手を掴めば彼はにこりと笑った。 「愛してるよ」  そう言ってこめかみにキスをされたら、調子が狂ってしまう。どう反応したら良いか分からなくなって、プイッとそっぽを向けば、その直後パシャンと小さな水音がして彼がゆっくりプールに入ったのが分かった。 「純もおいでよ」 「……水冷たい?」 「そうでもないよ」  彼の返事を聞いて、浮き輪を両脇でキュッと抱え直す。 「やっほーーい」  ザッパーンと水しぶきを立てて飛び込めば、正和さんは目をぎゅっと瞑って顔を手で拭った。 「ちょっと! 髪の毛まで濡れた」  珍しくムキになっている正和さんを見て、思わず笑ってしまう。 「なに女子みたいなこと言ってんの? 正和さんも泳ごうよ」 「じゅ~ん~」 「わっ、待って、ええっ、正和さん早すぎだし!! 水の中で何でそんな動けんの?!」  パシャパシャと浮き輪を抱えたままバタ足で逃げるが、すぐに浮き輪を掴まれてしまう。慌てて浮き輪からすり抜けるが、あっと言う間もなく捕まってしまい持ち上げられた。 「ちょっと無理だって! 下ろして! それは──うわあっ」  容赦なく投げられて、水中に体が沈む。そのままジタバタとほんの数秒もがいて水面から顔を出せば、正和さんはニヤリと笑った。

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