480 / 494

いじわる彼氏とハネムーン 480

「──俺の勝ち」  ニヤニヤしながらそう言う彼は、本気で泳いだのか息を切らしていて、プールサイドに腕を乗せもたれかかる。 「~~っ」  いつも理不尽に彼のやりたい放題されているから、罰ゲーム自体はさほど嫌ではない。けれど、あれだけハンデをもらったのに勝てなかったのはとても悔しかった。 「……もう少し距離があれば勝てたし」 「そりゃそうでしょ」  正和さんはクスクス笑って髪をかき上げると、プールサイドに上がって部屋に入ってしまう。  ……悔しい。 「ジュース何飲む?」  しばらくしてルームサービスのメニュー表を持ってきた彼は、こちらに向けて見せてくれる。だが、メニューなんて見るまでもなく飲みたいジュースは一択だ。 「……オレンジ」 「だと思った。注文しといたよ」 「えー」 「何?」 「なんでもなーい」  注文したなら聞かなくていいじゃん、なんて思いながら、プールサイドに手をついて腕に力を入れる。しかし、上がろうとしたのに途中でズルッと落ちてしまって正和さんに笑われてしまった。 「バテてんの?」  ビーチベッドに座った彼の言葉は聞き流し、再び力を込めれば、今度はちゃんと上ることができた。全力で泳いだから体が重くて、フラフラしながらも手をついて立ち上がる。  椅子で少し休もうと彼の方に歩み寄れば、目の前の彼が何やらニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべる。 「うわ~、純やらし~」 「は? え……? 待って、水着破れた。てか、どこ行った?」  彼の視線の先に目を向ければ、露出した股間が視界に映る。いつの間にか水着はゴムだけになっていて、布が完全に破れてしまっていた。それどころかプールの中にも水着の切れ端は見当たらない。 「溶けちゃったんじゃない?」 「は?」 「ここまで綺麗に溶けるとは思わなかったなぁ」  溶けていることを前提に話す正和さんをじろりと()めつける。言い方からして彼の仕業に違いない。  いつもよりぴったりしていたけれど、まさかこうなるなんて誰が予想できただろうか。太ももとウエストにくるりと巻きついたゴム。股間を囲み強調するようにぴったりと張り付いた紐状の布。これなら全裸の方がまだマシだ。 「正和さん!!」 「なぁに? 文句は言わない約束だよ」 「~~っ」 「今部屋の清掃中だからその格好じゃ戻れないね~」  彼は心底楽しそうにそう言って、エロい水着をちらつかせる。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!