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~忍び寄る気配~ 2
今日は十月三日。
月末までってことは……あと二十八日か。
そんな事を考えながらため息をつくと気分が沈んでしまう。普通の学生が二ヶ月で三五〇〇万も稼いでこれたら、ある意味問題だ。
『十月中に返せなかったら覚悟しとくんだな』
あのおじさんの声が蘇る。
「覚悟って……もしかして臓器を売られたり……?」
いやいや、さすがにそれはないだろ。……人身売買?
「ちがう、ちがう」
頭に浮かぶ考えに身震いし、その考えを打ち消すように首を振る。とりあえず今は考える事をやめて早く家に帰ろう、そう思った時だった。
……まただ。
誰かが後ろの方にいる気配がして焦る。
どうしよう。
ドキドキする胸を落ち着けるように深呼吸する。家まではあと少し。走れば二分かからないくらいで着くだろう。家の場所を知られてしまうのは怖い気もするが、きっと既に知られているだろうから、人目があるうちに家に逃げた方がいい。
……よし。
思い切って、ダッと走り出すと、後をついてくる気配がした。俺は全力疾走で家まで行き、鍵を素早く開けて中へ駆け込む。バタンッと勢いよく扉を閉めて、すぐさま鍵をかけた。
「ふぅ」
ここまで来ればもう大丈夫だろう。念のため、チェーンもかけておき、靴を脱いで部屋に上がる。
借金の事で頭を悩ませているのに、ここ一週間は誰かにストーカーまでされていて、気が休まらない。まだ相手の顔は一度も見たことがないが、気のせいではないと思う。
もしかしたら、俺が逃げ出さないように債権者側が見張りをつけているのかもしれないが、本当の所はわからない。
「もう疲れた……寝よ」
今日は朝四時から四時間もコンビニで働いた。その為、起きたのは三時半で、寝るのが大好きな俺は眠くて眠くてたまらない。
幸い、今日はもうバイトがないので、ゆっくり休む事ができる。本当はすぐにでも、違うバイトの面接に行くべきなんだろうけど、どう頑張っても期限内に返せる余地はなく、ほとんど諦めている。
これでも、この一ヶ月で二十万も稼いだんだ。学校にも行きながら。これを見たら、あの人たちも少しは期限を延ばしてくれるかもしれない。そんな淡い期待を抱きながら、荷物を適当に放って階段を上がる。
「ふぁ……」
大きな欠伸をして、夕飯とお風呂は一休みしてからにしよう、なんて思いながらベッドに横になると、あっという間に眠りについた。
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