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~甘い誘惑~ 5

 あの後、お昼ご飯を簡単に済ませて荷物をまとめたり部屋の掃除をしたりしていたら、あっという間にバイトの時間になってしまった。  コンビニで六時間働いて帰宅したのが十九時十五分。シャワーを浴びて弁当を食べたら、約束の時間まで後僅かだった。  これからの生活が楽しみだが、それと同じくらい不安もあって。今も荷物の確認をしたり無駄に部屋をうろついたりして落ち着かない。 (家事とかできないけど、どうしよう……。でも、それくらいは、やらないとまずいよね……) 「よし、少しずつ頑張ろ」  そう決意した所でインターホンが鳴った。時刻は二十時ちょうど。一応、モニターを見て、今朝来た彼なのを確認してから扉を開ける。 「こ、こんばんは」 「こんばんは。荷物はそれだけ?」  優しく微笑んで、廊下に置いてある鞄二つを指差す。  荷物は制服や体操着、教科書など学校で使うもの、私服が数着と私物が少し。家具などは向こうに揃っているだろうし、これで十分だ。 「はい。これからお世話になります! よろしくお願いします」 「よろしく」  彼はクスッと笑ってそう言うと、鞄二つを拾い上げる。 「俺が持ちます」 「大丈夫だよ。純くんは電気とか消してきて」 「あ、はい」  俺が戸締まりの確認して玄関を出ると、家の前に停めてある車に既に荷物を入れてくれていた。もたもたと玄関の鍵を閉めて、一度扉を引いて鍵が閉まったのを確認する。振り返れば、助手席を開けて待っていた彼が「どうぞ」と微笑んだ。  車に乗り込んで、彼も運転席に座ると、ゆっくりと車を発進させる。 (……何か話した方が良いのかな。でも何話そう)  話題が見つからなくてソワソワしていたら、彼から声をかけられた。 「純くん、学費は今どうしてるの?」 「えっと、一年分前払いなんで二年生の分は払ってあります」 「そっか。じゃあ、三年生に上がる時、またかかるんだ?」 「はい、あと積立金が毎月……」  そんな会話をしていたら、あっという間に彼の家に着いた。自宅からここまでは、途中信号などで止まったりもしたが、五分もかかっていない。ここなら学校も今まで通り徒歩で通えそうだ。 「おいで」 (てか、広っ……何これ!? え、豪邸!?!!)  彼の家に来て、庭の広さに驚いていたら、玄関もだいぶ広くて緊張してくる。  三五〇〇万円の借金を簡単に肩代わりしてくれた人の家なら当たり前なのかもしれないけど、やっぱり凄い。

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