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~甘い誘惑~ 6

「ここがリビング、キッチンはこっち。全部自由に使って良いよ。夕飯は食べた?」 「あ、さっき食べたばっかです」 「そっか。冷蔵庫に入ってるものも好きに使って。何か欲しいものがあれば言ってくれれば用意するし」  にっこり笑ってそう言ってくれる彼にお礼を言って、後をついて行く。 「お風呂はここね。シャンプーとかも好きに使って良いよ」  そう言って案内された浴室は、シャワーと鏡のついた洗い場が五セットも並んでいて、浴槽は軽く泳げそうなほど広く、まるで旅館のようだ。 「わぁ……ひろい」 「ふふ。お風呂は入ってきた?」 「あ、はい。シャワー浴びてきました」 「じゃあ、明日入ると良いよ。次は……」  廊下を歩きながらトイレの場所や、彼の部屋の場所も教えてもらい、さらに廊下を進む。 「――ここが純くんの部屋だよ」  そう言って扉を開けた彼に促され、中に入ると、予想外に広くて目を丸くする。十五畳ほどもあるこの部屋は、一人で使うには広すぎるくらいだ。六人掛けのテーブルセットと大きなベッドに目がいく。  壁は白に近いクリーム色だが、きれいに施された細工が高級感を引き立てているし、床には毛足の長いフカフカの絨毯が敷いてあり、スリッパを脱いで踏むと足が沈むのがわかる。靴下も脱いで素足で踏むと、指の間から、にゅーっと出て、癖になりそうな気持ち良さだった。ベッドも大の字で寝ても余裕があるくらい大きくて、今まで寝ていた布団よりも寝心地がいい。  そうやって部屋を見て回ってると、いつの間に部屋を出て行ったのか、カップを乗せたお盆を手に彼が戻ってきた。 「気に入ってもらえた?」 「はい。とても広いし、使いやすいし、俺がこんな豪華な部屋を使うのは勿体ない気がします」 「ふふ、気に入ってもらえてよかった」 「あ、あとこれ……」  鞄から白い封筒を取り出して、彼に手渡せば、首を傾げながら受け取る。 「ん?」 「バイト代です。その……少しなんですが、これからも頑張るので――」 「ああ、大丈夫だよ。それは純くんがとっておいて。頑張ったね」  そう言って、封筒を俺に返した後、頭をポンポンと撫でた。このまま素直に受け取った方が良いのか、彼に渡した方が良いのか悩んでいたら、「どうぞ」とココアの入ったカップを渡される。もうこの話を続けられる雰囲気ではなくなってしまったので、封筒を鞄にそっとしまって、カップを受け取った。

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