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~甘い誘惑~ 8
(……てか、何でこんなことを?)
「純くんはセックスしたことある?」
「へ? な、ない……です」
予想外の質問に間抜けな声が出て、真っ赤になりながら答えたら、彼は嬉しそうににっこり笑った。
「ふーん。じゃあ処女なんだ」
「……は?」
これまた意味の分からない言葉に唖然としてしまう。いや、言葉の意味がわからない訳ではないが、それは男の俺に言う言葉ではない。
『ふふ、可愛い』
彼が何か言ったような気がしたが、俺はそれどころではなくて。頭の整理が追いつかなくて、焦りと不安を感じながらただただ困惑していた。
けれども、彼といるのは危険だと言うことは、常軌を逸した今の状況からも彼の雰囲気からも想像できる。そっと彼から距離をとり、逃げるようにベッドの端まで後退りすれば、鎖がジャラジャラと音を立てた。
「さて、何から始めようか」
膝をついてベッドに上がる彼はニヤリと笑う。目がサディスティックに光った気がして、湧き起こる恐怖にぶるりと震えた。
時間をかけてゆっくりこちらに近づいてくる彼が怖い。
「や……くんな!!」
手をぎゅっと握りしめ、拘束された腕を前に出して、顔を隠すように下を向く。動く度に鎖がジャラジャラと冷たい金属音をたてて、それが一層恐怖を煽った。
「純、そんなに怖がらないで。初夜は優しく……が原則だからね」
そう言って目の前まで来ると、俺の手首を優しく掴んで顔の前から退 ける。
名前を呼び捨てにされたが、今の俺はそれに気づく余裕も無い。
(優しくするとか言って、何で繋がれたり変な薬飲まされてるんだ? ってか、問題ソコじゃないし!)
そうこうしている内に、彼に押し倒されて、焦りと恐怖から心臓がバクバクと暴れ出す。
「やだっ、や……」
手足を大きくバタつかせ、彼の胸を叩いたり、下腹部や足を蹴れば、手首を強く掴まれてベッドに縫い付けられる。
「やめろ、触んな!!」
押さえつけられても尚、暴れれば、彼は大きな溜め息をついた。
「……まあ、反抗的なのも悪くないか」
そう言った後、顔が近づいてきて――、あっという間に唇を塞がれていた。
混乱していたから一瞬固まったが、舌が入ってきてすぐ、自分の状況を把握して暴れる。
「んぅ、んんっ」
俺は必死で抵抗して逃げを打つが、体格差のせいか相手はビクともしない。歯列をなぞって入ってきた舌が、上顎を擽 るように舐めてきて腰が浮く。
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