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~甘い誘惑~ 9
「ふ……ぁ、やっ……放、せ」
舌を絡めとられて、膝で中心部をスリスリ刺激されれば、否が応でも性欲を煽られて興奮してくる。気持ち悪いのに気持ち良くて、甘い吐息をこぼしながら、もじもじと腰をくねらせれば、ますます口付けが深くなった。
「はぁ……や、め……んんっ」
思いっきり舌を噛んでやると、彼はやっと身を引いた。驚いたような顔をした彼の口に、うっすらと血が滲んでいて、少しだけ罪悪感を覚える。
「あ……ごめん、血ぃ出てる……」
彼はクスリと笑うと、口の端についた血を舌で舐めとって、俺の顎を指先でクイッと上げる。
「悪いと思ってるなら言うこと聞こうね」
「そ、それとこれとは話が別だろ」
「だから?」
「……そもそもこんなことしてくるお前が悪い」
「へえ」
彼の表情が少し引き攣るのを見て、背筋がぞくりと震える。彼は目をスーッと細めると「こういう話はずるいからあまりしたくなかったけど」と、ゆっくりと話し始めた。
「そもそも俺が借金返済してやらなかったら、たくさんの人にこんなことされてたの分かってるの? それどころか臓器売られてたかもしれないのに」
「っ……」
「それが恩人に対する態度? 可愛らしい抵抗ならまだしも、さっきみたいな事するなら俺も容赦しないよ」
鋭く冷えた目で見られ、心臓がバクバクと鳴り響いて、体が小刻みに震える。
「っ……ご、ごめん、なさい」
「……わかったならいいよ。いい子にしててね」
「なに、する気」
本気で聞いたのに、彼はクスッと笑っておどけた調子で返してくる。
「そんなに焦らなくても、俺は逃げないよ」
意図的に話しを逸らされた気もするが、今の俺には余裕がなくて、ついつい声を張り上げて、突っかかるようなことを言ってしまう。
「焦ってないし! てか、逃げてくれた方が嬉しんだけど?」
しかし、彼は一瞬眉をぴくりと動かしただけで、すぐに楽しげな笑みを浮かべながら問いかけてくる。
「そういうプレイが好きなの?」
「は? どういう意味?」
「そのままだよ。純は放置プレイが好きなドMなのかなーって」
ニヤニヤしながらそう言われ、唖然とする。どこをどう取ったら、そうなるのか彼の思考が分からない。いや、わかりたくもない。
「ドMなら俺と相性抜群だね」
彼はニヤリと口角を上げると、俺の顎を掴んでいる手の親指で唇をゆっくり撫でる。
「俺、いじめるの大好きだから」
そう言って、楽しそうに笑うと彼の目元もクッと上がった。
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