9 / 494

~甘い誘惑~ 9

「ふ……ぁ、やっ……放、せ」  舌を絡めとられて、膝で中心部をスリスリ刺激されれば、否が応でも性欲を煽られて興奮してくる。気持ち悪いのに気持ち良くて、甘い吐息をこぼしながら、もじもじと腰をくねらせれば、ますます口付けが深くなった。 「はぁ……や、め……んんっ」  思いっきり舌を噛んでやると、彼はやっと身を引いた。驚いたような顔をした彼の口に、うっすらと血が滲んでいて、少しだけ罪悪感を覚える。 「あ……ごめん、血ぃ出てる……」  彼はクスリと笑うと、口の端についた血を舌で舐めとって、俺の顎を指先でクイッと上げる。 「悪いと思ってるなら言うこと聞こうね」 「そ、それとこれとは話が別だろ」 「だから?」 「……そもそもこんなことしてくるお前が悪い」 「へえ」  彼の表情が少し引き攣るのを見て、背筋がぞくりと震える。彼は目をスーッと細めると「こういう話はずるいからあまりしたくなかったけど」と、ゆっくりと話し始めた。 「そもそも俺が借金返済してやらなかったら、たくさんの人にこんなことされてたの分かってるの? それどころか臓器売られてたかもしれないのに」 「っ……」 「それが恩人に対する態度? 可愛らしい抵抗ならまだしも、さっきみたいな事するなら俺も容赦しないよ」  鋭く冷えた目で見られ、心臓がバクバクと鳴り響いて、体が小刻みに震える。 「っ……ご、ごめん、なさい」 「……わかったならいいよ。いい子にしててね」 「なに、する気」  本気で聞いたのに、彼はクスッと笑っておどけた調子で返してくる。 「そんなに焦らなくても、俺は逃げないよ」  意図的に話しを逸らされた気もするが、今の俺には余裕がなくて、ついつい声を張り上げて、突っかかるようなことを言ってしまう。 「焦ってないし! てか、逃げてくれた方が嬉しんだけど?」  しかし、彼は一瞬眉をぴくりと動かしただけで、すぐに楽しげな笑みを浮かべながら問いかけてくる。 「そういうプレイが好きなの?」 「は? どういう意味?」 「そのままだよ。純は放置プレイが好きなドMなのかなーって」  ニヤニヤしながらそう言われ、唖然とする。どこをどう取ったら、そうなるのか彼の思考が分からない。いや、わかりたくもない。 「ドMなら俺と相性抜群だね」  彼はニヤリと口角を上げると、俺の顎を掴んでいる手の親指で唇をゆっくり撫でる。 「俺、いじめるの大好きだから」  そう言って、楽しそうに笑うと彼の目元もクッと上がった。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!