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第17話

 彼は一瞬傷ついた顔をしたが、すぐに皮肉っぽい笑みを浮かべて部屋を去っていく。残された俺は痛む体に気を遣いながら、ゆっくりベッドの端に腰掛け、伸びをした。 (これからどうなるんだろ……)  首輪に繋がれた鎖を手のひらに乗せ、じっと見つめる。それなりに重みのある金属の硬くて冷たい感触と、動く度ぶつかって音をたてるこの感じはどうも不快だ。 「養子って言ってたのに……騙された」  ぼーっと鎖を眺めていたら扉が開いて、彼が戻ってくる。手にはペット用の餌皿を二つ持っていた。片方の皿にはミルクが、もう一方の皿には動物用のドライフードが入っている。それは俺の目の前――足元――に置かれ、俺はベッドから降りるよう促された。  今になって、さっきの皮肉っぽい笑みの意味を知る。 「……何これ?」 「キャットフードとミルク」 「そんなのは見れば分かる」 「純の餌。耳と尻尾生えてるし猫と同じでいいかなって」 (ほんと、何でこんなとこ来ちゃったんだろ)  顔を背けてベッドに戻ろうとしたら腕を掴まれる。振り向くと彼の顔が凄く近くて驚いた。ニコニコと笑っているのに、目が笑ってないせいかとても怖い。 「なんなら、口移しで食べさせてあげようか?」 「はぁ!?」 「……食べないならお仕置きだよ」  低くなった彼の声音が怖くて、命令された内容が屈辱的で、唇をぎゅっと噛む。 「自分で、食べる」  小さな声でそう言えば、彼はニヤリと笑って言葉を続ける。 「じゃあ猫みたいに口だけで食べてね。手を使ってもお仕置きだから」 「っ……」  苛立って餌皿をひっくり返したくなるが、唇を噛み締めてその感情に目を瞑る。優しくすると言って、した行為が昨日のような酷い行為だ。お仕置きだなんて、きっととんでもないことをされるに違いない。  身震いして、仕方なくお皿に直接口をつけて食べる。ミルクも手を使えないと舌でちょっとずつ飲むしかない。床に這いつくばって食べていると、とても惨めな思いになってくる。だが、自分の発言に今更後悔しても遅い。 「俺の作ったご飯が嫌なら、ずっとキャットフードでも食べてなよ」  独り言なのか俺に向けて言ったのか、ボソッと呟くように言った彼の声はどこか寂しそうだった。

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