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第18話

 餌を食べさせられた後、彼は部屋を数時間あけた。その間、一人になった俺は何もすることがないので、ベッドの上でゴロゴロしてるしかなく逆に疲れてしまった。  一時頃になって昼食が運ばれてきたが、言うまでもなくキャットフードとミルクだけで。食欲なんか微塵も湧いてこないのだが、食べないとどんな目に合わされるか分からないので仕方無く全部完食してやった。  その後は「隣の部屋で仕事してる」と言う彼に連れられて、部屋を移動した。逃げられるチャンスだと思ったものの、すぐに首輪の鎖を壁から飛び出た金属の輪に繋げて、南京錠を付けられてしまった。監禁する為にわざわざ壁まで弄ってるのかと思うとゾッとする。  そして、空調が効いているのか寒くはなかったのだが、全裸は嫌で、頼み込んで毛布を与えてもらった。今はそれにくるまりながら、どう逃げ出そうかと思案中。  借金を肩代わりしてもらったとはいえ、こんな危険な人の側には居たくない。もちろん、後で働いて借金は彼に全額返すつもりだが、それはそれ、これはこれ、だ。  服も着させてもらえず監禁、さらには強姦して、食事がペットフードのみと言うのはあまりにも酷い。 (……そういえば、この耳と尻尾って元に戻るのかな?)  今更ながら、そんな疑問が脳内をよぎる。隣に居る彼をちらっと覗くと、書類と睨めっこしながら何かを悩んでいる様子だった。しかし、不安になった俺は今聞かずにはいられなくなり、彼の肩を軽く突つついて呼びかける。 「ねぇ」 「……何?」 「この耳と尻尾、元に戻んの?」  不安で震える声で尋ねれば、彼は少し考えたあと、何かを思いついたような顔をして言った。 「俺の言うこと聞いて良い子にしてればね」 「……何で?」 「戻る薬は俺が持ってるから」 「ふ~ん」と納得したものの、また一つ問題ができた。 (薬がないと戻れないなら、逃げられないじゃん)  思わず溜め息が出てしまう。そもそもこんな得体の知れない薬、体に変な影響はないのだろうか。無意識に動いていた尻尾を見つめて、指先でソッと触れればゾクリとして身震いする。 (……ま、薬は逃げるとき探せばいっか)  面倒で難しい事が苦手な俺は、考える事を放棄して、そんな安易な発想に落ち着く。解決策が見つかって自然と笑みが浮かび、再び毛布に身を(うず)めたら、彼が怪訝(けげん)そうに俺の顔を覗き込んでいた。 「何考えてるの」 「別に……何も」 「嘘は嫌いだよ。教えて」  彼はスーッと目を細めて、少し低めの声で聞いてくるが、正直に話すつもりはない。  

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