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第31話

「っ、うぅ……」  瞳に涙が滲み、次から次へと溢れてくるそれに視界が遮られる。一度、溢れ出したら、なかなか止めることなんてできなくて。 「う、ぅっ……ひ、ッく……」  ポロポロと涙を零して、嗚咽を漏らしながら泣いていたら、彼は歩みを止めて機嫌が悪そうにため息をついた。リードをクイッと軽く引かれれば、俯いていると苦しくなって、自然と彼の方を見上げる事になる。  また何か怒らせるような事をしたのかと怖くなって身体が震えた。 「泣かないでよ。俺が悪いみたいじゃん」 「だって、っ……だって……、っく」  こんなに酷いことをされるくらい俺は悪いことをしただろうか。鼻をスンスン鳴らしながら泣いているせいで、言葉が上手く出てこない。 「おれ、嫌だって、言ってるのに……謝ってる、のに」 「……」 「そ、なに駄目なら……最初から、そう言って、くれれば……俺も……ひっく……ごめ、なさい」  俺が号泣しているせいか、彼はばつが悪そうに唇を噛む。困惑した様子で俺の前に屈むと、あやすように言った。 「……ごめんね。俺が悪かったから、泣かないで」 「ふっ、うぅ……っ」 「帰ろっか」  そう言った彼の声はとても優しかった。  家に帰るなり、彼は「お風呂に入ろう」と言い出して、二人でお風呂に入った。彼とセックスしてしまったせいか、男同士だというのに恥ずかしくて、目のやり場に困ってしまったのには戸惑った。これから彼以外の男の裸で緊張してしまったら……と思うと少し不安だ。  お風呂を上がった後は、彼に体を拭かれて、甲斐甲斐しく髪の毛まで乾かしてくれた。今はソファの上で抱きかかえられながら、櫛で髪を梳いてもらっている。  先ほどから人が変わったように優しい彼。温かく包まれるような体温にうとうとしながら、思考を巡らせる。 なぜ、彼は酷い意地悪をするのだろう。 「眠そうだけど……ベッド行く?」 「いい。まだお昼だし」 「そう」  そう言って櫛をテーブルに置くと、俺に首輪をつけて項にキスを落とす。 「あの、さ……」 「んー?」 「なんで……いじめんの? 借金を返してくれたのは凄いありがたいと思ってるし、申し訳ないとも思ってるけど……ここまでされる理由がわからない」  彼は少し考えたあと、言いづらそうに口を開いた。 「……好きだから?」 「ワケ分かんない。好きな人には優しくするでしょ、普通」 「好きだから優しくしたいし、苛めたくもなるんだよ」

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