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第33話
「あー、食べちゃいたいくらい可愛い」
「なっ……っ! ちょ、やめ……ぁっ」
彼はエプロン越しに乳首を摘まみ、それをきゅっと押し潰した。変な声が出てしまい、慌てて口を押さえたが、煽るように撫でられて、体がビクビクと飛び跳ねる。
手が下方へ向かって、次第に本気で煽り始めるものだから慌てて彼の手を掴んだ。
「ごはん……作るん、でしょ」
「あー、そうだった。だって純が可愛すぎるから」
そう言って俺から手を離す。彼がそう言う前に舌打ちが聞こえた気がするが、聞かなかった事にしておこう。
(俺のせいじゃなくて、あんたが犬みたいにサカってるからだろ)
そう思ったが口には出さない。言おうものなら、酷い仕打ちが待っていそうだから。
「……純。心の中で俺に悪態ついたでしょ?」
少し低めの声音で言われて、ビクリと肩が揺れる。もしかして俺の心が読めるんだろうか。
「純はホントに分かりやすいね。全部、顔に出てるよ」
「べ、別に……考えるのは自由じゃん」
「ふーん……夜のベットが楽しみだね」
そう言ってニヤリと笑った彼の雰囲気に射すくめられる。
「……ごめんなさい!!」
彼に謝って、考えていたことをありのまま話すと、顔を歪めたがすぐに許してくれた。
「最初っから素直になればいいのに」
そう言って、冷蔵庫から食材を出してくるとハンバーグ作りに取りかかる。
初めてのハンバーグ作りだから、上手く出来るか不安だったけど作るのは案外簡単だった。それに何より彼の指示が的確で分かりやすくて、スムーズに作ることができた。
サラダは俺特製のドレッシングをかけて完成だ。
あとは、ご飯が炊けるのを待つだけ。……なんだけど、まだエプロンは外させてもらえなくて。
「ねぇ。エプロン外していいでしょ?」
「だーめ。あとでね」
「何で?」
そんなやりとりをしばらくしているとご飯が炊けた。テーブルに料理を並べて席に着く。
二人で作ったご飯はいつもより美味しくて、なんだか心が温まった。
ご飯を食べ終えると、いつの間に作ったのかフルーツがたくさん飾ってあるパフェが出てきた。それはお店で出てくるような見映えで、口に運ぶと見た目以上に美味しかった。
デザートも食べ終わって二人で片付けてから歯磨きをした後は、彼の部屋に来た。
俺はベッドに腰掛けて、先ほどから棚の引き出しをいじっている杉田をぼーっと見る。
「ご飯はいつも自分で作ってんの?」
暇だから適当に話を振ってみると、彼は作業したまま答えた。
「んー、普段は家政婦にまかせっぱなしかな。料理は趣味でやってるけど、やっぱ好きな子の前ではいいところ見せたいし、美味しそうに食べてくれると嬉しいよね」
その言葉に顔が熱くなる。
何だか恥ずかしい。
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