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第54話

 髪の毛がふわふわする感触に目が覚める。  瞬きしたら、頭を撫でながらこちらを見ている正和さんの顔が近くにあった。目が合うと微笑を浮かべて頬を撫でてくるから、また胸がドキッとして顔が熱くなる。 「課題やらずに寝てたの?」 「……集中、できなくて」  正和さんはクスッと笑って、俺の手をとると体を起こす。 「ご飯できてるよ」 「……うん」  二人でリビングに行くと美味しそうなカレーの匂いがした。テーブルに料理を運ぶのを手伝って、一緒に食べる。  正和さんの作ったカレーはちょうど良い辛さで、おかわりまでしてしまった。サラダもデザートも美味しくて幸せだ。  食事が終わった後は、シャワーを浴びてから、正和さんの部屋に行った。  開いている扉の奥に彼の姿が見えて、そっと部屋に入る。扉を閉めて彼の方を向くと手招きされたので、ベッドに上がって彼の隣に転がれば、腕枕をされた。 「電気消しちゃうよ」  正和さんは、俺の耳にキスを落とすと、枕元にあるリモコンで部屋の明かりを落とす。 「おやすみ」 「え……?」 (寝るの?) 「んー、どうした?」 「な、何でもない」  いや、手を出されたいとか、エッチな事したいとか、そんな事は思っていないけど、正和さんが変なことをしてこないのは驚きだ。 「……おやすみなさい」  しばらくして、本当に寝てしまったのか正和さんの寝息が聞こえてくるが、俺は変に意識してしまって中々寝付けない。 (なんかほんと、今日の俺変だ……)  自分の気持ちが分からなくて、悶々としていたら眠りにつくまでにかなり時間がかかった。 「そろそろ起きて」 「ん……」 「純ちゃーん」  正和さんの声が聞こえて目を覚まし、目を擦って大きなあくびをする。  彼は何故かスーツ姿でネクタイまでしっかり締めていた。 「今日は夕方まで仕事で出かけてるから、良い子に留守番しててね」 「んー」  寝ぼけながら返事をすると、頭を撫でられて唇に軽くキスを落とされる。 「行ってきます」  部屋を出て行った彼をぼーっと見送って、寝返りを打つ。起きようか、二度寝しようか考えていると、だんだん頭が冴えてきた。  ベッドから出て、欠伸をしながらリビングへ行く。テーブルの上には皿に乗ったサンドイッチがラップをかけて置いてあった。その脇にメモが置いてある。 『お昼は冷蔵庫の中に入れておくね』  洗面所に行って、手と顔を洗ってリビングに戻ると椅子に座って、サンドイッチを頬張る。正和さんの作るご飯は本当いつも美味しい。  行儀が悪いけど、一人なので食事をしながらスマホを弄る。  ホームボタンを押すと待ち受け画面が表示されて、その写真に顔がポッと赤くなった。 「っ……」  そこに写っているのは正和さんに腕枕をされて、気持ち良さそうに眠る俺とニヤリと笑う彼。 (しかも正和さんに抱きついている……)  寝ている間に自分から抱きついたのだろうか。そうだとしたら、なんかもう恥ずかしすぎる。

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