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第55話

 朝食後は、自分の部屋に行って課題を進めた。  世界史と地理は教科書を見ながらやったらあっという間に終わり、古典と現代文も量が少なく得意な科目なので、これもすぐに終わった。  残るは英語だけだ。英語の課題も半分くらい終わらせて、そろそろお昼ご飯を食べようかと思ったら電話の着信音が響く。  スマホの画面を確認すると、相手は親友の拓人だった。だが、電話に出ようか迷っているうちに切れてしまう。  再び着信音が鳴って出ようと思うと、今度はメールだった。送り主はやはり拓人だ。 『古典と現文教えて!』  久々の連絡に思わず笑みが零れる。  けれども、今は正和さんに軟禁されているので、拓人と会うのは無理だ。大きく溜め息をついて、少し考えた後、正和さんの部屋に行ってクローゼットを覗き込んだ。  だが、そこに目当ての物は見つからなくて、他の部屋を探しに行く。恐る恐る隣の部屋に入ってクローゼットを開けると、探していた俺の服がたくさん掛かっていた。 「あった!」  ドキドキしながら適当に手に取った服を着て、首輪に手をかける。しかし、これは鍵がついていて外す事ができなかったので、諦めて部屋を出た。  俺が今からしようとしていること、それはここから逃げ出すこと。正和さんは夕方まで帰らないと言った。逃げ出すならきっと今しかない。  自分の部屋に戻り、スマホを首から提げて、緊張してバクバクする胸をぎゅっと押さえる。喉をゴクリと鳴らして部屋を後にした。  今は正和さんのことをそんなに嫌いではない。  むしろ胸が高鳴ってドキドキして、好きかもしれない。だけど、これが本当の好きなのかはよく分からなかった。男同士だし、年も離れている。  閉じ込められて、性行為をさせられて、一緒に生活をして、好き好き言われて、自分も好きだと脳が錯覚しているのかもしれない。一度外へ出て独りになってから、客観的に考えてみたかったのだ。  正和さん以外の人からの連絡は、その気持ちを後押ししてくれてるような気がした。  玄関へ行くと靴を履き、いよいよ扉に手をかける。 「……あれ?」  だが、押しても引いても開かない。鍵を回して再び押すが、開かなかくて首を傾げた。三つも錠があるから、どれかが開いててどれかが閉まってたのかな、と順番に試していく。 「あっ!」  十分ほどガチャガチャやっていたら、ようやく扉が開き、勢いよく玄関から飛び出した。

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