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第56話
しかし、玄関でドンッと誰かにぶつかる。
誰か……と言っても、目の前に立っているのはもちろん正和さんだった。恐い顔をした彼は中に入ってくるとドアを閉めて、後退りする俺を冷たい目で見た。
監禁生活から抜け出そうとしていた俺はあっけなく玄関の前で捕まってしまい、詰問を受ける。
「純、ここに来ていいなんて言ったっけ?」
口調は優しいものの目が鋭く恐い。
「えっと、そのっ……ごめんなさい!」
後が怖いので、まずは謝っておこうと口が勝手に謝罪の言葉を紡ぐ。だが、正和さんから返された言葉は低く冷淡だった。
「そんなこと聞いてないんだけど」
焦っている俺の腕を引き、玄関から近い部屋に移動する。連れられて来られたのは壁一面が鏡張りの初日に使った部屋だった。
「正和さっ――」
呼びとめようとするも乱暴に胸を押され、後ろのめりに大きなベットへ倒れこむ。起き上がろうとすれば、彼はすかさず俺の上に乗り上げた。
「玄関に行っちゃダメだって言ったよね?」
その問いに俺はただコクコクと頷く。
「じゃあ、何であんな所にいたの? それにその服……何で俺の許可なく着てるの?」
「これ、は……」
言うのが怖くて躊躇ってしまう。言い訳を探して視線を彷徨わせたら、顎を掴まれて無理やり彼の方を向かせられた。
「質問に答えなよ」
「っ……!」
今までに聞いたことのないくらい強い言い方で身が竦む。
「ごめん、なさ……っ」
「話聞いてた?」
謝るとまたもや低く言われ、肩をビクリと揺らして、カタカタと震えながら涙を流す。それを見た正和さんは大きなため息をついて、自分の前髪をかき上げた。
「純……謝るのもいいけど、ちゃんと答えて」
そして、先程より幾分も柔らかな口調で先の言葉を続ける。
「どうして俺の言いつけを守らず、あんな所にいたの?」
「それ、は……」
「それは?」
「逃げようと、おも、って……」
「ふーん」
正和さんの低くなった声音にビクリと肩を揺らし、怖くて怖くては口は勝手に謝罪の言葉を繰り返す。
「めん、なさい……ごめ、なさい……ごめん、なさい」
「やっぱり躾が必要かな」
呆れたような口調でそう言うと、俺の着ていた服を全て脱がし、腕を後ろで一纏めにして縛ってしまった。
「どうしようか」
「ゃ、正和さっ……ごめん、なさい」
彼は何かを考えながら、俺の腕を縛っている縄を掴んで乱暴に歩かせる。
「んー、そんなに外に出たいなら出してあげるよ」
「っ……なに、する気」
「お仕置き。悪い子には必要でしょ」
(怖い、怖い、怖い……!)
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