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第57話

「いや、だ……」 「またこんな事したらどうなるか、言うこと聞けない悪い子にはしっかり教え込まないとね」  何をするのか分からないが、お仕置きが怖いので逃げようと手足をジタバタさせる。しかし、その様子を見た彼は呆れたようにため息をついた。 「まだ逃げようとするの? ホントに聞き分けのないね」 「っ、ごめ、なさい……も、しないから、もう逃げたりしない、から……許してくださっ」 「泣いても無駄だよ。二度としないようしっかり躾ないとね」  そのまま玄関を出て、裸足で芝生の上を歩かされる。 「あそこの木の向こう側は敷地外で道路になってるんだ」  そう説明しながらその方角へ進んで行く正和さん。敷地外って事は当然人もいるって事で――。 「や、だ……お仕置き、してもいいからっ……外は」 「しても良いから? 何で上から目線なの?」 「違っ、そんなつもりじゃ……」 「本当に反省してるならお仕置きしてくださいって自分から言うべきじゃない?」 「ぁ、ぅ……ごめ、んなさい、許してください」  これから何をされるのか分からないが、少なくとも全裸のこの姿で人通りがある所へ行くのは間違いないだろう。正和さんが怖くてたまらない。  木の茂みまで来るとすぐそこは本当に普通の道だった。車も通っているし、人も歩いている。  木のおかげで少しは見えづらくなっているが、こちらを意識すれば見えるだろう。 「このままここで玩具入れて縛り付けておこうか」 「っ……許して、ください……ひッく、うぅ」  彼の顔が凄く怖い。  いつもならお仕置きと言っても、もっと楽しそうにニヤニヤ笑いながらするのに、今は全く笑みを浮かべていない。目をスッと細めると何かを考えているように黙る。 「ごめんなさい、ごめんなさい……っ」  逃げようと思った時、見つかれば仕置きされるだろうと覚悟はしていた。どんな事をされても正和さんにされるなら受け入れられると思った。そもそも本気で彼から逃げようと思ったわけではないし、少し距離を置きたかっただけなのだ。  しかし、今の正和さんは自分が思っていた以上に怖くて、涙がボロボロと零れ落ちる。彼からの情は全く感じられず、冷めた表情で見られて胸がズキズキ痛んだ。  震える声で謝罪の言葉を繰り返すが、彼は黙ったまま俺を見下して何かを考えている。 「ゆる、して……ゆるして、ください」 「純は俺のこと嫌い?」 「ちが、う……」 「じゃあ何で逃げようとしたの?」 「……わから、なくて」  頭の中を整理する余裕なんてなくて、思った事をそのまま言えば、彼の目はいっそう鋭くなった。 「何その言い訳。俺、玄関の方行っちゃダメだって言ったよね。そんなこともわかんないの?」 「違っ……そうじゃ、なくて……き、気持ちが、わかんなくて……」 「何言ってんの」  はっきりとした答えをしないからか、彼は眉間に皺を寄せて苛立ちを露わにする。

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