80 / 494

第80話

 いったいいつまでこんな事が続くんだろう。正和さんはすぐに戻って来てくれるのだろうか。それとももう夜まで来てくれないのだろうか。  底知れぬ不安と恐怖で涙が止まらない。  それなのに媚薬に侵された体は、浅ましくも貪欲に快楽を求めて腰が揺れる。体を少し動かすだけで腕に縄が食い込んで僅かに痛い。  しかし、薬のおかげかその痛みさえ刺激となって気持ち良かった。縄が敏感な肌や、乳首を擦ると気持ちいい。  もっと、もっと、と強請るように腰をくねらせ快感を得る。 「やだ、あっ、正和さん、正和、さん……あぁ」  身動いで後孔の玩具が良い所を刺激すれば、ビリビリと電気が走ったみたいに快楽の波が押し寄せる。  イきたいのに、リングを付けられた男根はイくことを許されず、熱が溜まって苦しい。 「許して……はぁあ、だめ、だめ、正和さんっ」  動く度に腕の縄が、全体に巻かれた背中の縄を引っ張って、しっとり汗ばむ肌に吸い着くようにぎゅうぎゅう締め付けた。 「ぁっあ、あ、正和さっ……ん゛~~っ」  気持ち良すぎておかしくなりそうだ。  早退する事になったのも、勇樹に触られたのも、全部正和さんのせいなのに、何でこんな目に合わなければならないのだろう。  正和さんが良いのに。正和さんじゃなきゃ嫌なのに。 「はぁ、やだ、やだ……ひと、りで、こんな……正和さん、正和さんっ」 「うるさいなぁ」  言葉に反して、とても優しい声音がしたので顔を上げると、部屋の入口には正和さんがいた。 「忘れ物しちゃった」なんて言いながら仕事机の引き出しから書類を取り出す。 「も……いや、だ」 「嫌? お仕置きなのに?」 「っ……」  何と答えていいか分からずに考えを巡らせる。けれど、火照った頭じゃ答えなんて見つからない。 「反省してないんだね」  正和さんがリモコンを操作して振動を最大にすると、それが良い所に当たって後孔がキュッと締まる。すると更に感じてしまい、自身を苦しめた。 「あっあ、あ……やだ、やだ、だめぇ……っ、はぁ、は」 (イきたい……!) 「はぁああん、イきたっ……だめっだめ、あっあ、もうやら、やめ……んん」 「そんなに嫌なら止めれば良いよ」  彼は、俺の手にリモコンを握らせると「ここを押せば止まるから」と言って、手の平に紐でくるくると縛り付けて落ちないようにする。  だが、本当に止めても良いのかと疑問に思った瞬間、正和さんは呟いた。 「俺は止めて欲しくないけどね。耐えられないなら止めなよ」 「たすけ、や、許してくださ……あぁっ」  今すぐにでも止めて解放されたい。たが、そうしたら正和さんはどう思うのだろう。 「ゆるし、て……はぁあ、ん、ごめんな、さい」  刺激を逃すように頭を左右に振って、意味もなく手足の指を開いたり閉じたりする。瞳からは涙がポロポロ零れて、口からもだらしなく唾液が垂れる。 「気が向いたらまた来るよ」 「正和さんっ、はぁ、やだ、いかないで、ああう」  彼は部屋を出て、今度は扉を閉めて行ってしまった。一刻も早くこの刺激から逃れたいが、それよりも正和さんに許してもらえないのは嫌だった。嫌われたくない。 「あっあ、だめ、ィく、いぐっ、や、あぁあぁんっ!」  目の前がチカチカする。恐ろしいくらい気持ちいい。本当に頭がおかしくなりそうだ。  リングのせいで張り詰めた中心はイく事ができないのに、イくよりも気持ちよかった。絶頂を迎えた時以上の快感がずっと続いて、ドライでイった体はさらに敏感になる。  座ることもできないせいで足はだるいし、時折縄に体重を預けるせいで腕もつらい。  男根を縛られたままイキ続けるのは、ただただ苦しいだけだった。 「あぁあ、助けて、も、やら、だめ、らめぇ、正和さっ」  必死に正和さんの名を呼び、全身を震わせて奥歯をカチカチ鳴らす。次第に声も掠れてきて、嬌声と荒い吐息だけが部屋に響いた。  

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!