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第80話
いったいいつまでこんな事が続くんだろう。正和さんはすぐに戻って来てくれるのだろうか。それとももう夜まで来てくれないのだろうか。
底知れぬ不安と恐怖で涙が止まらない。
それなのに媚薬に侵された体は、浅ましくも貪欲に快楽を求めて腰が揺れる。体を少し動かすだけで腕に縄が食い込んで僅かに痛い。
しかし、薬のおかげかその痛みさえ刺激となって気持ち良かった。縄が敏感な肌や、乳首を擦ると気持ちいい。
もっと、もっと、と強請るように腰をくねらせ快感を得る。
「やだ、あっ、正和さん、正和、さん……あぁ」
身動いで後孔の玩具が良い所を刺激すれば、ビリビリと電気が走ったみたいに快楽の波が押し寄せる。
イきたいのに、リングを付けられた男根はイくことを許されず、熱が溜まって苦しい。
「許して……はぁあ、だめ、だめ、正和さんっ」
動く度に腕の縄が、全体に巻かれた背中の縄を引っ張って、しっとり汗ばむ肌に吸い着くようにぎゅうぎゅう締め付けた。
「ぁっあ、あ、正和さっ……ん゛~~っ」
気持ち良すぎておかしくなりそうだ。
早退する事になったのも、勇樹に触られたのも、全部正和さんのせいなのに、何でこんな目に合わなければならないのだろう。
正和さんが良いのに。正和さんじゃなきゃ嫌なのに。
「はぁ、やだ、やだ……ひと、りで、こんな……正和さん、正和さんっ」
「うるさいなぁ」
言葉に反して、とても優しい声音がしたので顔を上げると、部屋の入口には正和さんがいた。
「忘れ物しちゃった」なんて言いながら仕事机の引き出しから書類を取り出す。
「も……いや、だ」
「嫌? お仕置きなのに?」
「っ……」
何と答えていいか分からずに考えを巡らせる。けれど、火照った頭じゃ答えなんて見つからない。
「反省してないんだね」
正和さんがリモコンを操作して振動を最大にすると、それが良い所に当たって後孔がキュッと締まる。すると更に感じてしまい、自身を苦しめた。
「あっあ、あ……やだ、やだ、だめぇ……っ、はぁ、は」
(イきたい……!)
「はぁああん、イきたっ……だめっだめ、あっあ、もうやら、やめ……んん」
「そんなに嫌なら止めれば良いよ」
彼は、俺の手にリモコンを握らせると「ここを押せば止まるから」と言って、手の平に紐でくるくると縛り付けて落ちないようにする。
だが、本当に止めても良いのかと疑問に思った瞬間、正和さんは呟いた。
「俺は止めて欲しくないけどね。耐えられないなら止めなよ」
「たすけ、や、許してくださ……あぁっ」
今すぐにでも止めて解放されたい。たが、そうしたら正和さんはどう思うのだろう。
「ゆるし、て……はぁあ、ん、ごめんな、さい」
刺激を逃すように頭を左右に振って、意味もなく手足の指を開いたり閉じたりする。瞳からは涙がポロポロ零れて、口からもだらしなく唾液が垂れる。
「気が向いたらまた来るよ」
「正和さんっ、はぁ、やだ、いかないで、ああう」
彼は部屋を出て、今度は扉を閉めて行ってしまった。一刻も早くこの刺激から逃れたいが、それよりも正和さんに許してもらえないのは嫌だった。嫌われたくない。
「あっあ、だめ、ィく、いぐっ、や、あぁあぁんっ!」
目の前がチカチカする。恐ろしいくらい気持ちいい。本当に頭がおかしくなりそうだ。
リングのせいで張り詰めた中心はイく事ができないのに、イくよりも気持ちよかった。絶頂を迎えた時以上の快感がずっと続いて、ドライでイった体はさらに敏感になる。
座ることもできないせいで足はだるいし、時折縄に体重を預けるせいで腕もつらい。
男根を縛られたままイキ続けるのは、ただただ苦しいだけだった。
「あぁあ、助けて、も、やら、だめ、らめぇ、正和さっ」
必死に正和さんの名を呼び、全身を震わせて奥歯をカチカチ鳴らす。次第に声も掠れてきて、嬌声と荒い吐息だけが部屋に響いた。
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