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第84話

 文化祭は来月の二十一日金曜日と、二十二日土曜日の二日間だ。今日が十月二十二日だから、あと一ヶ月。  去年はメイド喫茶で女装をさせられて最悪だったから、今年は絶対そう言うのはやりたくない。 (お化け屋敷とか脱出ゲームとかなら、盛り上がるし無難で良いよな)  この学校では、クラスで第一希望から第三希望まで出して、後で生徒会の人たちがそれを元にして決める。因みに優先が三年生、二年生、一年生の順なので、去年よりは通りやすいはずだ。 (でも去年って、第一希望がメイド喫茶だった気が……)  普段、自分からあまり発言する事はないが、去年のようにまた女装物をやらされたらたまらないので、お化け屋敷と脱出ゲームを候補にあげた。  去年の女装はまだ良い。だが、今年は正和さんがいるのだ。文化祭に来るか来ないかは知らないが、女装なんてしたら絶対とんでもない事になるに決まっている。  他の人に女装見せたからお仕置きとか、その格好で変なプレイとか、やりそうな事が目に見える。  クラスの皆がワイワイと話し合う内に、黒板にはたくさんの候補が並んだ。 「コスプレ写真館とか斬新でいいんじゃね?」 (え? なにそれ?)  田中の発言にクラスの皆は「何それ、面白そう」と乗り気だ。 「それって何すんの?」  誰かが俺の気持ちを代弁するように聞いてくれる。 「コスプレの衣装とか小道具用意して、写真撮影できるスペース設けんの! んで、来た人には好きなコスプレしてもらって記念に写真撮影、みたいな」 「良いじゃんそれ!」 「おもしれー!」  他の皆も賛同する。自分達がコスプレするわけじゃないなら、それも悪くない。説明を聞いてホッとする。  そんな感じで第二、第三希望もあっという間に決まった。第二希望はお化け屋敷で、第三希望は縁日なので、どれになっても問題はないだろう。  文化祭の出し物が早くに決まったので、二時間目は席替えとなった。窓際の一番後ろの席になって、心の中でガッツポーズをする。  窓際って落ち着くし、一番後ろで先生から離れた位置ってなんか良い。別に授業中寝ようとか、携帯弄ろうとかではないけど、先生の近くってなんか嫌なのだ。前だと当てられやすいというのもある。  近かった勇樹とは離れたが、俺の前が拓人だったのでこれまた心の中でガッツポーズをした。もう進級するまで席替えしたくない。

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