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第88話

「今日は俺の好きな事、たくさん教えてあげる」  指先にキスをしたまま流し目を送ってくる正和さんに、胸が高鳴って鼓動が激しくなった。恥ずかしいけれど、正和さんのこういう所は結構好きだったりする。  今日は正和さんの事をたくさん知れるんだ、と思ったら何だか凄く嬉しくなった。  しばらく猫と戯れながらまったりした。  食後のお腹が落ち着いてきた頃、体を動かすのが好きだと言う正和さんに連れられてボーリングへ行った。  ボーリングは友人とよく行くし、結構自信があったのだが正和さんには敵わなかった。調子に乗るから言わないけど、長い手足が際立って見えて、なんか凄くかっこよかった。  途中、休憩してる時にゴルフやサッカーなんかも好きだということを教えてもらった。高校生の頃はサッカー部だったらしいので、きっと女の子からモテモテだったに違いない。  海が好きでシュノーケリングで魚を見るのも好きだと言う正和さんは、水族館に行こうと言い出して、車で五十分程かかる割と大きな水族館へ向かった。  その移動の車内でも昔の話とかをしてくれた。  何で医者になったのか聞けば、親に言われてなったらしい。『特別やりたい仕事でもなかったけど、知識があれば自分の大事な人も助けられるでしょ』と言っていて、少し胸が熱くなった。  それなのに『医者だったらモテるし、診療と称して色んな子に触れるしね』とか言ってて、やっぱり最低だなって思った。  あとは趣味で薬を作ったりもするらしい。媚薬とか変な薬を作るのも好きだと聞いてちょっと怖くなった。  それから、綺麗な景色を見るのは好きだけど、高い所がとても苦手らしい。正和さんにも苦手なものがあるのだと知って、意外だなと思ったら、虫も苦手だと言っていた。見ると鳥肌が立つし触るのとか絶対無理だ、と。  意外過ぎて可愛い。もしかして、ゴキブリとか退治できない感じなのかな。今度、虫を持って正和さんに悪戯してみたい。  水族館ではイルカのショーを見たり、館内をゆっくり回ったりしていたら、あっという間に時間が過ぎた。 「中華料理とか大丈夫?」  車に乗ってシートベルトを締めると、正和さんは携帯電話を取り出す。余談だが、正和さんは未だにスマホじゃなく二つ折りの黒い携帯だ。 「うん。中華好きだよ」 「夜景が綺麗なレストランがあるんだ」  そう言って正和さんは予約の電話を入れる。ぼーっと会話の内容を聞いていると、どうやら八時にそのお店に行く事になったらしい。  今は五時半だから、お店が少し遠かったとしてもまだまだ時間に余裕がありそうだ。

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