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第93話

「っ……あまり可愛いこと言って煽らないで」  正和さんは俺のジャケットを脱がせるとキスをする。左手で俺の後頭部を押さえ、舌を絡めながらもう片方の手でシャツのボタンを外していく。 「はぁ、ん……っ」  ボタンが全開になると、シャツをするりと脱がせてくるが、俺が正和さんの首に腕を回していたからか、彼は脱がせるのをやめて深く口付けた。シャツは腕に引っ掛かったまま中途半端にはだけており、妙に厭らしさを醸し出している。 「んぅ、ふ……ぁ」  噛みつくような荒々しいキスをして、胸を揉むように撫でてくる正和さんはいつもより余裕がなさそうだ。口腔を舌に犯されて、指先を動かすのも億劫なほど、身体が蕩けてじんじん痺れる。 「純……」  唇を離すと掠れた声で名前を呼ばれ、そのまま後ろに押し倒された。お互いの指を絡ませ合うように手を繋ぎ、ベッドに縫い留めるように押し付けられる。 「正和、さん……?」  上から見下ろしてくる正和さんは目をギラギラさせていて、今にも食べられてしまいそうな気分になった。唇に啄むようなキスをして、チュッとリップ音をたてながら首筋や肩にもキスを落とされれば、そのたび体をビクビク震わせる。 「首輪よりこっちの方が似合うね」  ネックレスを掬い上げて、それにもチュッとキスをした。ゆっくり肩に舌を這わせて、足の間に膝をクイッと割り込ませる。  正和さんの足が股間に当たって、焦れた体は強請るように腰を揺らし、厭らしく擦り付ける。 「痛っ……!」  しかし、突然肩に噛みつかれて小さく悲鳴をあげた。反射的に体を離そうとしたが、手は押さえられているし、正和さんが俺の上にいるから全く身動きができない。されるがまま首筋や耳にも噛みつかれた。  耳朶を強めに噛まれて痛みに顔を(しか)めると、フーッと耳の中に息を吹きかけられる。そのまま舌がちゅるりと入ってきて、身体がゾクゾク震えた。 「はぁ……ヤ、それ、やだ」  痛みのせいなのか、快楽のせいなのか瞳にはじわじわ涙が浮かぶ。淫猥な水音をたてながら敏感な耳を舐められて、犯されているような感覚に、思考はぐずぐずに溶かさる。 「あっ、ぁ、ぁ……ぁぅ」  焦らされて火照った体は早く正和さんに触ってもらいたくて、先走りで下着をぐっしょり汚す。 「入れていい?」 「え……?」  唐突に言われたその言葉の意味が理解できなくて、思わず聞き返した。だが、すぐに何のことを言っているのか分かって青ざめる。 「ごめんね」  正和さんは小さく謝ると、触れるだけのキスをしてシャツを脱ぐ。カチャカチャと音をたててベルトを外すと、下着ごとズボンを下ろした。  手際よく俺のズボンと下着も剥ぎ取ると、正和さんは大きくそそり立つそれにローションをかける。馴染ませるように軽く扱き、そのまま俺に覆い被さって、屹立(きつりつ)した熱いものを蕾にあてがった。

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