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第98話

「根は良い人だよ。優しいし、料理もうまい」 「……仕事は?」 「SMクラブ経営してる。……意地悪で始業式みたいに、あんな事するのが好きなのあの人」 「へえ……」  正和さんのことをありのまま話したら、拓人が引いてる様子だったので、慌ててフォローする。 「でも普段は凄く優しいし、俺もそんな嫌じゃないっていうか……」 「そっか。まあ、でも幸せそうで良かった。あんな風に……その、縛るようなやつだから心配だったし」  拓人が安心したようにニッコリ笑ったので俺も笑みが零れる。やっぱり拓人に話して良かった。 「うん。……あ、それで帰りはあの人が迎えに来るから、これからは一緒に帰れないかも」 「あ、マジかー。あーあ、純の事は俺が狙ってたのにな~」 「えっ!?」 「いや、マジな顔しないで! 冗談だからっ」  そんな感じでじゃれながら地学室に入る。やっぱり拓人は話しやすいし、ちょうど良く距離を置いてくれたりもするのでこれからも一緒にいたいな、なんて思った。  地学が終わって教室に戻ると、皆が黒板の前に集まってガヤガヤしていた。 「俺らのクラスはコスプレ写真館だってー!」  そう言ってこちらに笠原が寄ってくる。 「おー、第一希望通ったんだー。って事は次の時間は係り決め?」 「そうじゃない?」  どうやら文化祭の出し物が決まって、その一覧表が張り出されているから集まっていたようだ。 (コスプレ写真館……)  自分たちがコスプレしないとは言え、なんか嫌な予感がする。いや、こうやって思った時は絶対良くない事が起こるから、あまり考えないようにしよう。こういう勘は当たらなくて良い。  六時間目は文化祭の係り決めをして、写真撮影や着替える場所の配置などを話し合って、予算の割り当ても決めた。  部活に入っていないと言う理由で、俺は二日間とも九時~十三時まで受付をさせられる事になってしまった。  拓人は演劇部で毎年恒例ステージでの劇があるから準備がメインだ。去年のメイド喫茶だってそれを理由に女装しなくて済んでいたからちょっと羨ましい。  帰りは正和さんに迎えに来てもらって、疲れていたので着替えもしないままソファに座った。だから本当ならゆっくりくつろいでいるはずだった。  しかし、腰掛けている俺の太ももに、何故か正和さんが頭を乗せてきて。正和さんはそのままソファに長い足を伸ばして寝転んでいる。 (俗に言う膝枕ってやつですか……) 「……正和さん」 「ん?」 「どうしたの?」 「何が?」 「いや、何がって……この体勢……」  この体勢以外に何を聞くと思ってるんだ。 「純の足柔らかい」 「普通だと思うけど……」 「やっぱさ、高校生の制服ってやらしいよね」 「……は?」 (制服がイヤラシイ? 何言ってんのこの人)

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