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第103話

 正和さんに変な薬を飲まされて、妊娠できる体にされてしまった。男の俺が妊娠なんてしたら正直周りの目が怖いし羞恥心もある。友人たちはきっと受け入れてはくれるけど、物凄く揶揄ってくるだろう。  だが、もし自分が女で普通に妊娠できる体であったとしても、高校二年生で学校生活も一年ちょっとある状態では子供を作ったりしない。  金銭面などは全て正和さんのお世話になっているから、学校をやめるよう言われたら辞めるしかないのだが、せめて卒業までは学校に行きたいと思っている。  俺の気持ちを無視してそんな事をする正和さんが悲しくて、行為の最中も涙が止まらなかった。泣いて懇願しても聞き入れてはもらえず、結局中出しされてしまった。  正和さんが部屋を出て行ってからも色々考えた。  妊娠したら病院どうするのかなとか、正和さんは医者らしいし診てくれるのかなとか、男が出産した場合戸籍とかどうなるのかなとか、変に研究対象とかにされたりしないかなとか、不安だらけで本当に色々考えた。  だけど、正和さんの事は大好きだし、俺と正和さんの子ができるのならそれは素直に嬉しいと思った。それに正和さんは俺が外へ行くことにあまり良い感情を持っていないので、子供を作って逃げないようにすれば安心するのかなとも思った。  だから、学校をやめて正和さんの赤ちゃんを育てながら幸せに暮らすのも良いかなって思い始めていた。  それなのに。 「純……言いにくいんだけど」  後ろから抱き締めてくる正和さんに、完全に身を委ねていたら、本当に言いにくそうな声音で話を切り出す。 「……何?」 「えーっと、妊娠できる薬って嘘なんだよね。飲んでもらったのは、その……ただの麦茶?」 (……は?)  あはは、なんて乾いた笑いをもらす正和さん。 「……何それ。意味分かんない」 「ごめんね」 「なんで……」 「純の泣いて嫌がる顔が見たくて……」 (は? は? は? なんだよそれ……てかその為に妊娠をネタにしたの?) 「最っ低!」 (いや、ほんと考えらんない。頭おかしいんじゃないの)  抱き締められていた腕をどけて、正和さんから距離をとる。 「ほんとごめんね」 「ふざけんな」 「純、ごめんね」 「……知らない」  あんな酷い事をしておいて、何でこんなに軽いのだろう。 「機嫌なおして? ね? ……あ、夕飯は外に食べに行こう?」 「……」 「あ、純っ」  家出したい気分だけど、玄関ドアを開ける暗証番号を知らないから、逃げるように正和さんの部屋を飛び出して自分の部屋に行く。  とりあえず部屋の鍵を閉めるが、正和さんの事だから勝手に開けて入って来そうなので、テーブルを扉の前に持って行き開かないように塞いだ。無駄に高そうなテーブルだから重さもあるし、たぶん開かないだろう。  

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