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第109話
写真は様々なものがあり全部捨てたくなったが正和さんに止められた。いや、正しくは脅された。捨てても良いけどメモリーカードに入ってるから、まだ現像してないの含めて写真屋さんに自慢しながら印刷してくる、と。
俺の恥ずかしい写真なんかもたくさんあって、それを写真屋さんで現像してきたのかと思うと泣きたい。
写真を片付けた後は、休みだから出かける事にした。着替えて正和さんの運転で街に出る。
「どこ行くの?」
「んー、ドライブしてランチ?」
そう言ってニコニコしている正和さんを脇で見ていると、仲直りして良かったなと思う。
「今年の文化祭は何やるの?」
「……コスプレ写真館」
「へえ」
「あ、コスプレするのはお客さんだから」
変な想像をしないように慌てて追加情報を口にする。正和さんは運転しながら何か考え事をしていて、ニヤニヤと口元を緩めた。
(なんか……嫌な予感……)
「それ、俺もできるんだよね?」
「ん、まあ……できるんじゃない? 何で?」
「何でもないよ。聞いてみただけ」
ふふ、と笑みを零す正和さん。何か企んでるように見えるのは勘ぐり過ぎなのだろうか。
お昼は俺のリクエストでお寿司を食べに行くことになった。
回転寿司しか行った事のない俺は、高そうな雰囲気の店に少し緊張したけど、とっても美味しかった。
食べ終えた後は、お話しながら一時間ほどドライブして、家に帰った。昨日お風呂に入らなかったし、今日はもう出かける事もないと思って、帰宅早々シャワーを浴びる。
「純~、一緒にお風呂入って良い?」
「え」
「だめ?」
体を洗っていたら、正和さんが扉の方から覗き込んで聞いてきた。一緒に入るのが嫌、と言うわけではないけど恥ずかしい。
「良いけど……」
返事をすると正和さんは服を脱いで浴室に入ってくる。シャワーと鏡のついた洗い場が五セット並んでいて、旅館の浴場みたいに広いが、使うのは端っこの二カ所だけ。
正和さんは俺の隣の風呂椅子に腰掛けて、頭を洗い始める。彼の体が大きいせいか、小さい風呂椅子は更に小さく見えた。
俺は体を流してから、軽く泳ぐ事ができるくらい広い浴槽にそっと足を入れる。最初はほんの少し熱いが、胸まで浸かる頃にはちょうど良いと感じられる温度だった。
正和さんも洗い終わってこちらにくると、お湯に浸かって脚を伸ばし、俺のことを抱き寄せる。正和さんの足の間の入って背中を胸にくっつけると、腕をお腹にまわされていつもの姿勢になった。
裸で密着していると胸がドキドキしてくる。
まだ明るい時間帯で、情事の後でもないのにこうしているのは何だかとても恥ずかしい。
(それに……)
「っ……正和さん、当たってる……」
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