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第110話
「だって純が可愛いから。何もしないからこれくらいは許して」
故意にではないみたいだけど、正和さんの大きく硬くなった中心部分が俺のお尻に当たる。いっそう胸がドキドキしてきて、なんだか少しのぼせてきた。
後ろを振り向き、火照った顔で見上げると正和さんは目をスーッと細める。お尻に当たっているそれが大きさを増して、俺に興奮しているのが分かった。
「……のぼせそうだから先出るね」
「じゃあ、出たら梨むいてあげる」
二人でお風呂を出て、バスタオルで軽く拭いてから服を着る。髪を拭いて、お風呂に入る前に外したネックレスに手を伸ばすと正和さんがそれを拾い上げた。
「つけてあげる」
正和さんの名が入ったハートのネックレス。それを彼の手でつけられる。お前は俺のものだと言わんばかりの行為に、胸がドキドキして頬が赤く染まった。
これを嬉しいと思うあたり、相当正和さんに感化されているのかもしれない。
髪を乾かして正和さんがむいてくれた梨を食べながら、ソファで寛 ぐ。特にやる事も話す事もなくて無言になった。 気まずいと言うほどの雰囲気でもないけれど、何か話題がないかと考える。
「明日は何かする?」
俺が話題を見つけるよりも早く、正和さんが先に沈黙を破った。
「んー、特には……」
「俺は夕方から仕事だけど大丈夫?」
「え……あ、うん」
(そっか、仕事か……。仕事って何するんだろう。向こうでも書類やってるのかな。それとも指導とか?)
昔は客の相手もしていた、と過去形で言っていたから今はそう言うのはしてないんだろうけど。なにをするのか気になる。
「遊んできたりはしないから心配しないで」
「別に……心配はしてないけど」
「日付が変わる前には帰れると思う」
そう言って俺の頭をぽんぽんと撫でてくる。お風呂に入ったばかりだからか、シャンプーの匂いがふわりと広がった。撫でられると幸せな気持ちになるし凄い心地が良くて、彼の手が離れていってしまうのが惜しい。
「そこに横になって」
今座っているソファーを指差す正和さん。
「……何で?」
疑問に思って首を傾げると、彼は「いいから、いいから」と言って、俺の事を俯 せになるように押し倒す。
「正和さんっ……?」
「マッサージしてあげる」
正和さんは俯せになった俺の上に跨がって、背骨の両脇をぎゅーっと押してきた。
「っ……」
(……気持ちい)
腰から背中にかけて、ツボを刺激するように押したり、揉んだりしてくる。腰の辺りは気持ちいいが、肩を揉まれると少しくすぐったい。
「どう?」
「ん……良い」
性的なものとは違った気持ち良さ。決して厭らしい触り方ではないのに、痺れるように響くそれに声が漏れそうになる。
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