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第126話

 気怠い体を起こすと上半身に掛かっていた布団がはらりと捲れて、脚の上に重なる。上に服を着ていない事に気付き、慌てて下を見るがやはり何にも身につけていなかった。  正和さんの姿を探すように部屋を見渡すけれど、いる気配さえ感じられない。少し気落ちして、ベッドから降りようと足を伸ばすと腰がズキズキ痛む。  こんなに痛いのは初めての時以来だ。  とりあえず水分をとろうとミネラルウォーターのペットボトルに手を伸ばす。喉がカラカラで張り付き、昨日声を上げすぎたせいかヒリヒリして痛い。  生ぬるい水を口の中に流し込み、一気に飲み干した。 「うー」 (……痛い)  正和さんはどこに行ったんだろう。腰をさすりながら、床に足をつけてベットから立ち上がる。 「っ……」  しかし、ガクンと膝から崩れ落ちるように倒れ、しゃがみ込んで床に手をついた。起き上がってリビングに行こうか、ベッドに戻ろうか悩んでいると部屋の扉が開く。 「大丈夫?」 「……これが大丈夫に見えるの」 「ごめんね。音がしたから来たんだ」  そう言いながら俺に近寄って、優しく腰をさすってくれた。そのまま抱き上げられてベッドに寝かせられる。 「どこにいたの?」 「起きそうもないからちょっと仕事してたんだ、ごめんね」  俺の頭を撫でて、ベッドの端に腰掛ける正和さん。 「お腹空いたでしょ」 「それより、痛い」 「……どうしたら良い?」  正和さんは俺の顔を覗き込んで、困った顔で苦笑した。 (どうしたら……って、言われても) 「……近く来て」  正和さんは少し驚いたような顔をした後、はにかんで、布団をめくって俺の隣にくる。優しく抱き締められて腰をさすられると、幸福感で胸がいっぱいになった。 「ふふ、でも昨日は良い事を聞いちゃったなあ」  思い返すような素振りで呟いて、ニヤニヤと笑みを浮かべる。労るように優しく撫でる手とは真逆の表情に、困惑して首を傾げた。 「良いこと……?」 「だって鞭を想像してたなんて可愛すぎるじゃない」 「っ! ち、それはっ、違くて……たまたま動画で――」 「へえ」  正和さんの意味深長な呟きに遮られて、体がビクッと揺れる。 「純もエッチなビデオ見るんだ?」 「ネットで、たまたま……」  顔にどんどん熱が集まっていくのがわかった。正和さんがクスッと笑うから、耳に息が掛かって変にドキドキしてしまう。 「どんなビデオか後で見せてね」  労るような撫で方から、厭らしい手付きに変わって腰からお尻の方へ移る。服を着ていないから、肌を撫でる直接の刺激に、中心が反応しそうになった。  腰がとても痛いのに、再びそんな事をしたら大変な思いをするに決まっている。慌てて正和さんの手を掴むと、彼も分かっているのかあっさりやめてくれた。 (っていうか、あんな恥ずかしい動画を後で一緒に見るなんて絶対嫌だ……) 「来週そういうプレイしようか」 「ら、来週!?」 「だめ?」 (来週って……心の準備が……)  いや、その前にそんなプレイはしない。妄想だったらアリだけど、痛い嫌いだし絶対無理。 「だ、だめ」 「んー」  落ち込むかと思ったが、正和さんはそんな素振りを見せず何かを考え始めた。

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