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第129話

 拓人は五百円玉を入れて腕まくりする。  一回二百円だが、五百円だと三回できるらしい。  しかし、一回目は箱に当たってアームが下まで降りず失敗。二回目、良い感じの所に降りたが少し手前だったので、うまく引っかからなくてアームの先が箱を滑っただけだった。三回目は、箱に引っかかって一瞬上に上がるも、左側が上がらず失敗していた。 「うわー、拓人ヘタ過ぎー」 「はああ? じゃあ純もやってみろよ」  俺が笑うと拓人は悔しそうに言う。 「えー」 「早く」と急かされ、仕方なく二百円を入れて、正面と横から覗き込みボタンを押した。 「あっ……あっ!」  箱はゆっくり持ち上がりこちらへ運ばれるのを、拓人は興奮して声を上げ、夢中で見ている。ガコンッと派手に落ちて取り出し口に転がったが、あんなに雑に落っこちて中身は大丈夫なのだろうか。 「すっげー! 純すげー!! 売って、売って! 俺に売って!」 「あげる」 「いいの!?」 「だって興味ないし」  拓人に箱を渡すと物凄く喜んでて俺も嬉しくなった。 「おおお、ありがとー! じゃ、次アレ撮ろうぜ!」 「男二人でプリクラとかどうなの……」 「今は女子じゃなくても結構撮るだろ」 「ほら、行こう」と行ってプリクラ機の方へ歩いて行くので、両替機で百円玉を作ってから行く。 「いっぱいあんのなー。どれにするー?」 (どれって言っても……何がどう違うんだ?) 「それとかは?」 「よし、それにしよう」  選んだ理由はモデルの女の子が好みのタイプだったから、それだけ。  中に入ると照明が明るくて驚く。  ガイドの声に従って何枚か撮ると右側のコーナーへ行くよう指示された。先ほど撮った写真に落書きをするらしいが何を書けば良いんだろう。  拓人の方を見ると『初プリ』とか『文化祭準備』とか俺たちの名前を書いていた。 (適当に日付でも入れとこ)  落書きが終わって一分程でプリクラが機械の横から出てきて、拓人が半分に切って一つを俺に渡してくれる。  実物より目が大きくて小顔で、茶髪は少し明るく写っていて肌もツルツルだ。 (なんか女の子みたい……)  それに比べ、拓人も同じように目が大きくなり小顔になったのに、イケメンになっている。もちろん実物はイケメンではなく普通だけど。 「あ、そろそろ帰らないと」  プリクラを機械からスマホに送って、時間を見ると五時半だった。楽しいと時間が過ぎるのが早い。  バスの待ち時間が十分程、バスに乗って十分程揺られ、拓人と別れる。 「また明日」 「おー、気をつけてー」  バス停に降りて、窓から見える拓人に手を振るとバスは発車した。このバス停から家まではちょうど十分くらい。少し急ぎ足で歩いて帰宅する。

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