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第134話 (正和視点)

 母に追い出され、リビングの扉の前に立つ。何かを話しているようだが、聞き耳を立てても何を言ってるのかまでは分からなかった。  だが、母のことだ。さすがに手を出したりはしないだろうが、意地悪な事を言って純を傷つけるに違いない。 『でもっ、正和さんを絶対幸せにします!』  廊下にまで響く純の大きな声に驚く。あんなに大きな声を聞いたのは初めてだ。 (絶対幸せにする……か)  それって俺が言うべき台詞じゃないのかな、なんて思っていたらリビングに戻っても良いと許しの言葉をかけられる。  中に入ると純は顔面蒼白で目に涙を溜めていた。そんな純を可愛いと思ってしまう辺り、やはり俺も酷いやつなのだろう。  号泣する純をなだめて、母に会話の内容を問い詰めると、それは楽しそうに純の細かい表情まで教えてくれた。  この前、妊娠の薬の件で色々あったから、今回の母の話はかなり純にダメージを与えたかもしれない。どうにかフォローしてあげないと、心に深い傷を負わせてしまうような気がした。  母がお茶を片付けにリビングを出て行くが、純は変わらず放心状態だ。俺の膝の上で呆然とテーブルの上を見つめる純の手を優しく握る。 「ごめんね。彰子さん酷いこと言うけど純のこと嫌いな訳じゃないし、そう言う人だから……」 「――――」  純の事をぎゅーっと抱き締めて、呆然としている純の耳にもしっかり入るようにゆっくり話す。 「本当に子供が欲しかったら養子を迎えるし、跡取りは俺の弟か姉さんの子がなるだろうから心配しないで」 「――――」 「……なんなら海外で結婚しようか」  そう言うと、無言だった純は頬をピンク色に染めて下を向いた。 (可愛い)  首筋に顔を埋めて匂いを嗅ぐと、つい舐めたくなってチュッとそこに吸い付く。小さく身動ぐ純が愛おしくて、抱き締める腕の力を強めたら「苦しいから離して」と怒られた。

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