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第135話
正和さんの膝の上から降りて、隣の椅子に腰掛ける。
「ありがとね、純」
「何が……?」
「彰子さんに言ってくれた言葉。凄い嬉しかったよ」
嬉しそうに微笑みながらそう言われると少し恥ずかしい。正和さんと話をして落ち着いてきたけど、彰子さんがリビングに戻ってきて少し緊張する。
「純くん、これあげる」
そう言って渡されたのはA4サイズの紙袋。中身は袋に包まれていて何が入っているのか分からない。だが、紙袋の大きさに対して中身が重たく感じるから、本か何かだろうか。
「何ですか、これ?」
「ふふ」
彰子さんは意味深長に笑い「本当は正和に渡そうと思ってたの、一人の時見てね」と俺にだけ聞こえる声で囁き、玄関へ向かって歩き出した。
「また来るわね。今度はご飯でも食べましょ」
彰子さんはコートを着て、ハイヒールの靴を履くと、玄関扉を開けてそう言った。正和さんと二人で見送って、リビングに戻る。
彰子さんも玄関の内側からの鍵開けられるんだな、とか、妙に感心しながらテーブルに置いた紙袋を見つめる。
「何もらったの?」
「さあ……」
一人の時見るよう言われたけど何が入ってるんだろう。正和さんもいる前で堂々と渡されたら隠すわけにもいかないし、一人で見るとか絶対無理だ。怒られる。
「開けてみたら?」
まあ、正和さんに渡す予定だったって言ってたから良いのかな。紙袋から取り出して、袋を開ける。
「っ……!」
しかし、中身を見たら驚いて、思わずそれを落としてしまう。
正和さんは不思議そうに拾い上げて、開いた袋の口から中を覗くとニッコリ笑った。袋から本を取り出して、中身をペラペラ捲って見ている。
気になって横目で少し見てみるが、やはり過激過ぎる。裸で縛られた男の子が表紙のそれはSM系の雑誌のようだ。表紙は確認していないが、他にも二冊あった。
(てか! これを息子に渡そうとする母親って……)
「んー、これは凄い好み」
正和さんは最後まで軽く目を通してテーブルの上に置くと、残りの二つも取り出した。一つは先ほどと同じような過激な本。もう一つは表紙がイラストで描かれたふんわりした雰囲気の本。
タイトルは『初めてのSM~Mの気持ち~』だ。正和さんは全てに目を通すと、その優しめの本を俺に渡してくる。
「参考になると思うよ」
「なんの」
「今後の?」
そう言って紙袋に本を戻すとその紙袋も俺に渡された。
「気が向いたら読んでみて。いきなりそこまではしないけど、こういうの好きだよ」
そう言って正和さんはキッチンへ行った。
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