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第137話
* * *
腰が痛い。本当にもの凄く腰が痛い。それから喉も痛い。睡眠不足のせいか頭も痛い。
朝四時に起こされて、それから五回もやるってどんな鬼畜。しかも三時間半休みなく。
「腰立たない? 送ってこうか?」
正和さんはクスクス笑って、俺の腰を厭らしい手付きで撫でる。
(……ムカつく)
ヘラッとして揶揄うようなその態度は本当に凄くイラつく。
「いい! 触んな変態!」
怒鳴りつけてガバッと起き上がり、ヘロヘロな足取りで浴室へと向かった。
もう少し申し訳なさそうな態度とかとれないんだろうか。こっちは色々あって疲れてたのに、朝早くから半ば無理やり襲われて、何で馬鹿にされなきゃならないんだ。
シャワーを浴びて制服に着替えた後、送って行くと言う正和さんを押し切って家を飛び出した。本当は送ってもらった方が楽なんだろうが、これ以上調子に乗らせたくないし、単純にムカつく。だって、朝食をとる時間もないってあんまりじゃないか。
昨日買った文化祭用の衣装を持って登校すると、クラスの皆は袋から取り出してワイワイとはしゃいだ。二日後の金曜日が文化祭だから、廊下や室内もだいぶ装飾が進み、今日からは授業もない。
全てが準備の時間にあてられる為、ほとんど自由時間みたいなもので、クラスの数名は買い出しと称してどこかへ遊びに行った。勇樹もそのうちの一人だ。
お昼休みに入ると、教室の角の方の床を陣取ってお弁当を広げる笠原。ボードや絵の具等が散らかっているので、あまりスペースはない。
俺はいつも通り拓人と購買に行こうとしてあることに気づく。
「あ」
「んー?」
「財布忘れた」
念の為、鞄の中やポケットを探すがやはり入っていなかった。
(あー……泣きたい)
「貸す?」
「いやいいよ、悪いし」
「遠慮すんなって」
「あんまお腹減ってないしヘーキ」
嘘。朝も食べてないからペコペコ。
「ほんとに?」
「うん、昼休み終わるまで保健室で寝てくるわ」
「はいよー」
寝不足と空腹で気持ち悪い。財布忘れたのも体調悪いのも全部あの変態のせいだ。
(……最悪)
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