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第148話

 十一月二十一日、金曜日。拓人は演劇の練習で朝早く、一緒に行けないので正和さんに送ってもらった。  朝礼が終わってすぐ、九時からコスプレ写真館の受付をする。意外と流行り、学年問わずたくさんの生徒で行列ができた。  受付業務は来た人の希望を聞き、金額を計算してお会計をすると言うもの。コスプレ衣装はどれでも一律五百円で、写真も一眼レフカメラで二枚まで撮ってもらえる。携帯やデジカメなどの持参したものでも一枚は無料で撮影できる他、追加の写真やチェキ、貸し出し等と言ったサービスもある。  だいたいの人は五百円の物なので、計算はほとんどしないのだが、たくさんの人と話したせいか結構疲れた。  一時になって受付当番も終わり、笠原と他のクラスを回った。勇樹はクラスで当番だし、拓人は演劇部の方でリハーサルがある。  お昼ご飯は一年C組の焼そばを食べて、一年A組のかき氷をデザートにした。寒かったから食べきれるか不安だったけど、練乳たっぷりのかき氷はとても美味しくて食べきることができた。  その後は二年A組のお化け屋敷に三十分並んで入り、二年B組のプラネタリウムを見て、拓人のいる演劇部の劇を見に体育館に行った。  劇を見終わると三時四十分で、あっという間に帰る時間となる。劇を終えた拓人と当番を終えた勇樹と合流してすぐ、俺は皆と別れて帰宅した。  お風呂に入り、正和さんと一緒に早めの夕食をとりながら、今日のことなどを話した。  七時頃になると、正和さんはスーツを着て仕事に出かけて行った。帰りは深夜一時になるという。  夜の遅い時間帯に帰ってくると言うのは、何故だか少しモヤモヤする。別に浮気だとかを疑ってるわけじゃないし、そんな遅くまで仕事なんて大変だろうな、と思う。  仕事と俺どっちが大事なの、なんて言うようなアホでもないし、当然仕事は大事だと思う。だけどお昼にすれば良いのに、と思ってしまう自分も否定できない。  特殊な仕事だから夜になってしまうのは仕方のない事かもしれないが、嫌なのだ。毎日行くわけでなく週末に一、二回出る程度で、他は書類などをやっているから、他の人に比べたら家にいる時間だって長いはずなのに。  今はまだ八時。正和さんが帰ってくるまでに随分と時間があるので、一週間後にされるであろうプレイの予習でもしようかと思って、自分の部屋に行く。  正和さんの母、彰子さんから貰った紙袋をテーブルの上に置き、中から本を取り出した。 「ん……?」  紙袋の底に横長の白い封筒が見える。 (なんだろう)  封筒をつまみ上げて中身を確認するとそれは写真だった。そこには先日会った彰子さんが写っている。今よりもいくらか若い。  その彰子さんに抱っこされているのは、正和さんなのだろうか。半べそをかいた二才くらいの男の子がしがみついている。顔の輪郭は丸く、目も真ん丸でクリッとしていて今の正和さんからは想像できない。 「……可愛い」  写真は二十枚程で、幼少期から高校生くらいまでの正和さんが写っていた。ちょうど自分と同じくらいの年の正和さんは既に大人びていて、今の正和さんをそのまま若くした感じでイケメンだ。  高校生にしては大人びているが、少しあどけなさが残るこの頃は、まだ純粋そうな顔をしており少し可愛げがある。 (……どうしよう)  これは正和さんに渡すべきか。だが、渡したらもう見せてくれないような気もする。こんな可愛い写真をもう見れないのは惜しい。

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