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第149話

(……そうだ)  スマホのカメラを起動して、写真をスマホの写真におさめる。そんなに枚数があるわけではないので、作業はすぐ終わり写真を封筒に戻した。  先程撮った写真にはアルバムの非表示フィルターをかけておく。  可愛い正和さんに口元が自然と緩むが、視界に入った過激な本に顔が引きつった。スマホを置いて本を手に取り、恐る恐るページを捲って読み進める。  正和さんはこういうのが好きだと言っていた。しかし、写真を見るだけでも、うっ……と引いてしまうのに、実際にやられたら耐えられる自信がない。  たまたま見てしまった動画のような、比較的軽めなやつなら良いかもしれないが、これは無理だ。パタンと本を閉じ、表紙がイラストで描かれた優しめの本を手に取る。 『初めてのSM~Mの気持ち~』  中を開いてみるが、先程のような過激な写真はない。ふんわりとしたイラストを交えた活字がメインの本。内容も参考書のような感じで『主人を信頼し身を委ねる』などといった心持ちなどが書いてある。主人のタイプ別に喜びそうな事まで書いてあった。 「ふーん」  一通り目を通してみて、知識として少しは頭に入ったが、実践まではできそうになかった。だが、先程よりもいくらか気持ちが軽い。きっと、そんなに身構えなくても大丈夫だ。  正和さんなら本当に酷い事はしないだろうし、それで彼の事を喜ばせる事ができるなら少しくらい頑張れる。本を紙袋にしまい、封筒を持ってリビングに戻った。  テーブルの上に封筒を置いて、時計をチラッと見る。もうすぐ十時だ。正和さんは先に寝てて良いと言ったが、先に寝てしまうのは申し訳ないのでできない。  ソファに座ってテレビをつけるが、面白い番組がないので早々に消した。そのまま横になりぼーっと天井を見つめる。 (明日は正和さんも来るのか……嬉しいような嬉しくないような……)  結局何もしないままソファを横になってぼーっとしていたら、数時間経ったらしくガチャッと音が聞こえてくる。  立ち上がって玄関まで行くと、ちょうど正和さんが扉を開けて中に入るところだった。 「おかえりなさい」 「起きて待っててくれたの?」  正和さんは驚いたような顔をして靴を脱ぐ。 「ただいま」  ふわりと笑った正和さんに、ぎゅっと抱きしめられて、離れる時に唇にキスを落とされた。少しだけ甘い香水のような匂いがして顔を顰める。 「変なにおい……」  ぽつりと呟くように言えば正和さんは慌てた様子で、自分の肩や腕に鼻を寄せ匂いを嗅ぐ。 「ごめんね、今日は新人の子に色々教えててずっと一緒だったから移ったのかも。お風呂入ってくる」  彼はそう言って浴室に向かった。  

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