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第150話
新人の子って、この前見たファイルにあった写真のようなキャストの事なんだろうか。ずっと一緒で教えるって一体何を教えるんだろう。
SMクラブだと性的な事も教育の内に含まれるんだろうか。
「純?」
お風呂に湯を入れてきたらしい正和さんが不思議そうな顔をして名を呼んだ。
「どうしたの、そんな顔して」
「……別に」
正和さんは俺の近くまで来ると、ぎゅっと抱き締めてくる。そのままソファまで連れて行かれて、膝の上で優しく抱き締められた。甘い匂いが気持ち悪い。
「……離して」
「何でそんな悲しそうな顔してるの」
「知らない。早くお風呂入ってきたら」
「今いれてる最中……あ、もしかして疑ってるの?」
「っ……」
俺の顔を覗き込むようにして聞いてくる正和さんに胸がドキッと跳ねる。
「本当に仕事だったんだよ? 浮気なんかしてたら、お風呂入る前に純に抱きついたり、キスしたりなんてできないよ」
「っ……でも、そんな匂いが付くくらいずっと一緒で教えることって」
つい思っていた事を言ってしまってハッとする。俺はなんて恥ずかしい事を言ってるんだろう。これでは妬いてるみたいではないか。
正和さんは軽くため息をつくと俺の頭をそっと撫でて、悪戯な笑みを浮かべて楽しそうに口を開いた。
「何教えてるのか知りたい?」
「……別に」
顔を背けると抱き締める腕の力を強めて、体を引き寄せられる。
「素直じゃないなあ」
そう言って頭の上に顎を乗せた。
「匂いは香水がきつかったから注意しといたし、次は大丈夫だと思うよ。これからは顔合わせる程度だし」
正和さんは説明するようにゆっくりとした口調で話す。
「教えてたのは、お客様と接する時のマナーとか、どうしたら次に繋げられるかとか、危険な時の身の守り方とか、そんな事。練習としてお客の役をやったけど、お互い服は脱いでないし、触ったのも手と足だけ」
「手と、足……」
正和さんの言葉を繰り返すように呟いたら、ソファにドサッと押し倒された。突然反転した視界に驚いていると、脛の部分を掴み足をグッと開かれる。
「ちょっ……」
「こういう事。基本的に本番行為はNGだからね。一応お客は審査してるけど、もしこうなった時どうするかとか教えてたの。触ったのも服越し」
「分かったから離し――」
「それに純が可愛すぎるから、その子なんて全然可愛く見えなかったよ。純のこと大好きだって言ってるのに、なーんにも分かってないんだから」
「だって……!」
「不安にさせてごめんね」
足から手を離した正和さんに背中に腕を回されて、体を起こされる。
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