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第151話

 そのまま優しく胸に引き寄せられて包み込むように抱き締められられた。心臓がトクトクと脈打ち速度を上げる。彼の胸はとても安心するし心地が良い。俺もそっと正和さんの背中に腕を回す。 「……そんなに心配なら今度からついて来る?」 「へ……?」 「やましいことは一つもないし、俺の店だから全然構わないよ。むしろ疑われたくないし来なよ」 「……いい」  「本当、酷いなあ。俺は純に早く会いたくて仕方なかったのに」  拗ねたような口調で言う正和さんにぎゅっと抱き付き、申し訳なさから小さくなった声で謝る。 「疲れてるのに……ごめん」  頭をわしゃわしゃと撫でられて体を離される。 「……良いよ。俺のこと大好きで嫉妬しちゃったんだもんね、かーわい」  揶揄うように言われて一気に顔が熱くなった。真っ赤に染まった俺の頬にキスを落とすと立ち上がる。 「お風呂入ってくるから先に部屋行ってて」 「……うん」  頷いて、キッチンでお茶を飲んでから部屋に行く。ベッドに入って布団を掛けると正和さんの匂いがした。この匂いを嗅ぐとドキドキすると同時に安心する。  しばらくして、髪が半乾きの正和さんが隣に来る。喉をくすぐるように撫でられて、目を閉じると、瞼にキスを落とされる。 「おやすみ」  正和さんはそう言って、チュッと唇に軽く触れるだけのキスをすると、体をぴったりとくっつけた。 「……おやすみなさい」  お風呂上がりの正和さんはとってもいい匂いがした。  スマホのアラームの音で目が覚める。急いで止めると隣には正和さんの姿があった。余程疲れているのか起きる気配がない。 (正和さん、いつもと違う)  スースーと寝息を立てている正和に少し違和感を覚えて、顎の辺りを見ると、うっすら髭が生えていた。そーっと手を伸ばし、触るとザラザラチクチクする。 (こんなイケメンでも髭は生えるんだ……) 「んー……どうしたの?」  俺が触ったせいか正和さんは目を覚まして、眠そうな瞼を擦って欠伸した。 「髭が生えてる」 「そりゃ、朝になれば生えるでしょ」  そう言って起き上がると先ほど俺がしたように顎を撫でてくる。 「そう言えば純はまだ生えてこないね」 「そんな事……少し生えてるし」 「えー、そうかなあ。産毛にしか見えないけど」  クスクス笑って顎から手を離すと、代わりに頭を撫でられる。 「可愛い。……このまま俺に抱かれ続けたら女の子みたいに生えて来なかったりして」 「っ……」 (……そんな事ってあるんだろうか)  正和さんは楽しそうにフッと笑った。 「冗談だよ。でも生えてきたら脱毛しちゃおうか」 「何で……!」 「だって生えてない方が可愛いよ」  そう言って彼はベッドから降りると部屋を出て行った。 (……なんか悔しい)

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