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第152話

 俺も洗面所に行き、顔を洗ってから鏡を見る。タオルで拭いて顎を撫でるがツルツルしていた。光で白く透ける産毛しか生えていない事に少し落ち込みながら、自分の部屋に行って制服に着替える。  リビングに行くと、美味しそうなオムライスが二つテーブルに並べられていた。俺の席の物にはケチャップでハートマークが描いてあるが気にしない事にする。  椅子に座るとフライパンを洗い終えた正和さんも席に着いた。 「いただきます」  ふわふわトロトロの卵とチキンライスが美味しくて朝から幸せだ。あっという間に食べ終えて、皿を片して歯を磨くと、家を出るまでにまだ少し時間がある。ソファで新聞を読む正和の隣に座ると、こちらを横目でチラッと見て微笑んだ。 「……今日来るの?」 「純が受付終わる頃、教室行くよ」 「そっか」 「今日も送ってく?」 「……うん」  新聞を覗き少し読んで見るが、文章が長くて全然頭に入って来ないので読むのをやめて、正和さんの腕にもたれかかり、頭をぴったりくっつけた。  普通なら肩に頭が乗るのに、彼の背が高いせいか中途半端にしか頭が倒れない。これも少し悔しい。  しばらくそんな風にまったりして、昨日と同じように車で送ってもらった。  今日は一般公開で校外からもたくさんの人が来るのでら受付は担当が終わるまで休む暇がないだろう。 という今朝の思いは見事予想通りだった。  とても忙しく、一般客も多い為とても騒がしい。良く言えば盛り上がっている。受付よりも案内係の方がまだ楽そうだ。  お金の代わりとして使われている券が缶の箱に入りきらなくなって、輪ゴムで束になって積まれている。  あと十分で当番も終わるという頃、廊下に女性の悲鳴が響いた。甲高い声をあげてキャーキャー騒ぐ人たち。その様子でなんとなく察しがつく。  たぶん正和さが来たのだろう。  一八二センチの高身長でモデルのような体型、それでいてイケメンで、愛想が良いのだからいつもモテモテだ。女性たちには近寄って欲しくない。  これが正和さんがモテる事に対する男としての妬みなのか、単純に恋人に色目を使って欲しくないというヤキモチなのかはわからないが、どちらにしても嫌だ。  教室に入ってきた正和さんは、Vネックのニットに、チノパンといったカジュアルな格好をしていた。 「もうすぐ終わりそう?」 「うん」 「あ、もうあがって良いよー。俺代わるし」  正和さんと俺の会話に入ってきたのは一時から受付担当の長谷川だ。先程まで受付の後ろの方で会話していたが、気を遣ってくれたらしい。  早めと言ってもあと七、八分で終わる所だったので、彼に甘える事にする。 「ありがとう」 「せっかくだから相楽たちもやってきたら?」  久々に苗字で呼ばれたな、なんて思いながら聞き返す。 「何を?」

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